ちょっと不思議でちょっと愉快な超短編作品がいろいろあります。
  • 06 «
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • » 08
--.--
--
(--)

Ads by Google 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2009.05
27
(Wed)

「期限切れの言葉」 

 二人で作った自慢の庭で、ツツジやシャガの花が一斉に開きはじめた。数年前は小さかった苗木が、今年はすっかり存在感を増していた。
 今の妻は、まだ土いじりに慣れない手で、自分が買ってきた好きなパンジーをせっせと植えている。
 縁側から一望すると、乳白色のフジが枝を伸ばし、そろそろ組み木の棚を欲しがっているようだ。きっとあれがここにいたら目を細めてそう言うに違いない――
 子どものいない私たちにとって庭は、心の住む場所だった。ここには恨めしいほど一年中絶えず美しい色があり、一度は孤独の深淵に沈んだ心を、時間をかけて照らしてくれた。

 今朝、検診に行った妻は先生に元気な心拍音を聞かせてもらったらしい。私の人生にこういう日が来るとは夢にも思わなかった。
「ありがとう」
 庭に向かって声をかけると、
「……こんな感じでいいよね?」
 晴れがましい笑顔でジョウロを左右に振りながら、少し控えめな言葉を返してくれた。


(了)
続きを読む »
2009.05
03
(Sun)

「音撃の島」 

 ブリキの兵隊は、絵に描いたように等間隔で三列に並ぶ。ピカピカの軍服に身を包み、よく磨きこまれたラッパをハイ、構え。最後方の三列目はバルブのつまりをスコスコ吹き出す。二列目は胸を広げて深呼吸。一列目は標的を見定めていざ発射!
 見よ、寄木細工の木馬にまたがった敵兵たちのどんぐり帽子がスポン! 炭酸水の王冠をかぶった王様は、宙を舞う帽子を数えて大笑い。
 島はみんなの宝もの。世界中から腕利きのラッパ職人が大志を抱いて舟を漕ぎ毎年毎年やってくる。街灯もポストも鳥かごも哺乳ビンだってみなラッパ。
 やがて、海岸線に巨大な寄木細工の艦隊が押し寄せる。王様は、なんてことないと高笑い。両手の金ラッパで指揮をとり、兵隊は三列になって迎え撃つ。特大の深呼吸、いっせいのせで吹き鳴らす。艦隊の帆をパーン! と撃ち破り、水平線の彼方まで押し戻す。
 島はみんなの宝もの。王様は緑かがやく海を見渡し、国民に囲まれながらシャンパンの栓を抜く。シュポン!

 
続きを読む »
2009.04
15
(Wed)

「納得できない」 

 これで何枚目だろうか。とうとう見合い写真がロボットになった。
 熱いお茶をすすりながら、しばらく眺めていると、「テレビが見られるらしいわよ」と母は付け加えた。

 
続きを読む »
2009.03
13
(Fri)

「頭蓋骨を捜せ」 

 借り物競争で僕は唖然とした。必死で一番に箱へ飛びついたのに何というくじ運の悪さだ。
 パッと思いついたのは、二階にある理科室の人体模型だった。夕暮れ前のひっそりした校舎に突入し、階段を駆け上がる。理科室は突きあたり。「廊下を走るな」なんて張り紙は無視して全速力で突っ走る。そして、理科室のドアを勢いよく開けたとき、人体模型が血相を変えてこっちに振り向いた。定位置を離れ、ヘビをホルマリン漬けした瓶から骨を取り出そうとしている。
 ふたりのあいだの時間が止まる。
『一組ガンバレ! 二組ガンバレ! 三組負けるな!』
 校庭の実況が理科室にも聞こえた。やばい、足を止めてる場合じゃない。
 すると人体模型はヘビの骨を握り締め、僕のほうに突進してくる。僕はもう無我夢中になって、ラリアットで思いきり首をなぎ払う。激しい音を立て人体模型は分裂し、床に倒れた。起き上がるかと構えたが、首が外れるともう動かなくなった。僕は欲しかった頭部の模型を拾い、何も考えず理科室を飛び出した。
 廊下に出ると、薄暗いトイレのほうから「あら、邪魔されちゃったのね」と女の子の笑い声がした。
 あいつもまた校舎で誰かと競っていたのだろうか。



*  *  *  *

「500文字の心臓」タイトル競作投稿作品。
読んだらぜひweb拍手をひとつクリックください。コメントも大歓迎です!
2009.03
02
(Mon)

「海のなかの銀河」 

 重苦しい海の底に転がって、わたしは魚の群が織りなす何億千という冷たいダイヤモンドの大河に圧倒される。海は深いところほど見通しが悪いと思っていたが、わたしの見た真実は違った。視界の端から端までキラキラと光る帯が太く貫き、その輝きによって古い世界が研磨され、新しい世界となって生まれていく。
 おそらくここは、いつか聞いた先人の跡をなぞるような航路でたどり着いた場所。時には偉大なる科学者が失われた古代文明について空想した。時には恋人たちの心待ちにした船旅が嵐に見舞われ塵と化した。そして、誰のものか、いつのものかも解らない骨片が、ダイヤモンドの帯によって研磨され、ゆらゆらと海の底に舞い落ちて堆積される。
 生物は生まれた場所よりずっと深いところで生を終えると、美しい神秘の景色を見るという。わたしの眼窩の暗がりに届いた雲母のような粒子から、それが生きた世界の記憶が断片的に流れ込んでくる。窓に映る雪のようにただ白く、海の底に音はない。きっと何十億年のどこかで生きたであろう記憶が長い時間をかけて少しずつ、ゆっくりと降り積もっていく。



*  *  *  *

※読んだらぜひweb拍手をひとつクリックください。コメントも大歓迎です。
 | ホーム |  »
プロフィール

sleepdog

Author:sleepdog
オンライン作家としてぼちぼち活動しています。群馬県出身、東京都在住、広告会社勤務の30歳、男です。どうぞよろしく。

★主管サイト★
本館(短編):Sleepdog's Salon
旧館:マイクロスコピック旧館
企画主催:犬祭

★主な活動フィールド★
ブランバー
SSFC
うおのめ文学賞
500文字の心臓
超短編小説会

ビジター数
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ