「ぴりちゃん」

ぴりちゃんはある日突然、グラニュー島の王宮に呼ばれた。
王宮の使者が差しだす手には触れず、早速マジパンの馬車に乗りこめば、紅茶をいただく間にも、バームクーヘンの橋を渡り、ザッハトルテ帽の門衛たちに挨拶し、七色のゼリービーンズで彩られた王宮に辿り着く。
謁見の間では、頭にカスタードロールケーキを並べた王様が待っていた。
「よく来たぴりちゃん、姫を助けておくれ」
「姫様がどうかしましたか」
「甘いものが好きで好きで太って太ってのう……」
この環境なら無理もない。困り果てた王様の横で、ウェハースを脇に抱えた宰相がフォローする。
「姫様はいくら言っても王宮の外へ食べに出てしまう。どんな食べ物もぴりっとさせるお主なら姫の暴食を止められるはずだ。もちろん相当の褒美をつかわすぞ」
これはまた予想外。
「ああ、どうやら勘違いなさっているようで。それは、ぼくと別のぴりちゃんです」
王様はひっくり返る、宰相も苦い顔。
しかし、せっかくの褒美を逃す手はない。
「ですが、王様ご安心を。ぼくは静電気のぴりちゃんです。姫様の部屋のドアノブにずっと静電気を流しましょう。これで外には一歩も出られません」
<了>
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