「頭蓋骨を捜せ」
借り物競争で僕は唖然とした。必死で一番に箱へ飛びついたのに何というくじ運の悪さだ。
パッと思いついたのは、二階にある理科室の人体模型だった。夕暮れ前のひっそりした校舎に突入し、階段を駆け上がる。理科室は突きあたり。「廊下を走るな」なんて張り紙は無視して全速力で突っ走る。そして、理科室のドアを勢いよく開けたとき、人体模型が血相を変えてこっちに振り向いた。定位置を離れ、ヘビをホルマリン漬けした瓶から骨を取り出そうとしている。
ふたりのあいだの時間が止まる。
『一組ガンバレ! 二組ガンバレ! 三組負けるな!』
校庭の実況が理科室にも聞こえた。やばい、足を止めてる場合じゃない。
すると人体模型はヘビの骨を握り締め、僕のほうに突進してくる。僕はもう無我夢中になって、ラリアットで思いきり首をなぎ払う。激しい音を立て人体模型は分裂し、床に倒れた。起き上がるかと構えたが、首が外れるともう動かなくなった。僕は欲しかった頭部の模型を拾い、何も考えず理科室を飛び出した。
廊下に出ると、薄暗いトイレのほうから「あら、邪魔されちゃったのね」と女の子の笑い声がした。
あいつもまた校舎で誰かと競っていたのだろうか。
* * * *
「500文字の心臓」タイトル競作投稿作品。
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パッと思いついたのは、二階にある理科室の人体模型だった。夕暮れ前のひっそりした校舎に突入し、階段を駆け上がる。理科室は突きあたり。「廊下を走るな」なんて張り紙は無視して全速力で突っ走る。そして、理科室のドアを勢いよく開けたとき、人体模型が血相を変えてこっちに振り向いた。定位置を離れ、ヘビをホルマリン漬けした瓶から骨を取り出そうとしている。
ふたりのあいだの時間が止まる。
『一組ガンバレ! 二組ガンバレ! 三組負けるな!』
校庭の実況が理科室にも聞こえた。やばい、足を止めてる場合じゃない。
すると人体模型はヘビの骨を握り締め、僕のほうに突進してくる。僕はもう無我夢中になって、ラリアットで思いきり首をなぎ払う。激しい音を立て人体模型は分裂し、床に倒れた。起き上がるかと構えたが、首が外れるともう動かなくなった。僕は欲しかった頭部の模型を拾い、何も考えず理科室を飛び出した。
廊下に出ると、薄暗いトイレのほうから「あら、邪魔されちゃったのね」と女の子の笑い声がした。
あいつもまた校舎で誰かと競っていたのだろうか。
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