「あおぞらにんぎょ」(未投稿作)
残念ながら僕は覚えていないが、窓際席の恋人が言うのだから間違いないだろう。季節は十月、羽田から大分空港に向かう便の途中で、青空を飛ぶ人魚の群れを見たそうだ。人魚は期待通りの容姿で、ブロンドの髪をなびかせ、銀の尾ひれで優雅に泳ぎ、手を振ってくれたそうだ。機内アナウンスでも興奮ぎみに「窓の外をご覧ください」と流れたようで、人魚が去ったあとはその話で持ちきりだった。
考えてみれば飛行機並みの速度で泳げるはずもない。けれど、周りの客も口々に見られてよかったと言っている。彼女の追及に困って機内誌を開くと、そこも空飛ぶ人魚の特集だった。溜め息とともにラックに戻す。
「肝心なとき寝ちゃうね」
彼女の言葉には含みがあったがそれはいい。それよりまさかアレが成長したのかと心配になった。だとすれば、人魚を見た人は二度と魚が食べられなくなるはずだ。なぜならそれは僕が超能力少年時代にやった呪いだからだ。魚料理が嫌いだった僕はビニル袋に魚の卵を入れ、自分の精子を注ぎ、風船をつけて空へ飛ばしたのだ。僕は中二だった。
あ、あれ、ちょっと待てよ。
「ブロンド……?」
「ん、どうしたの?」
どうやら同じことをやったやつが海の向こうにもいたようだ。
(おわり)
考えてみれば飛行機並みの速度で泳げるはずもない。けれど、周りの客も口々に見られてよかったと言っている。彼女の追及に困って機内誌を開くと、そこも空飛ぶ人魚の特集だった。溜め息とともにラックに戻す。
「肝心なとき寝ちゃうね」
彼女の言葉には含みがあったがそれはいい。それよりまさかアレが成長したのかと心配になった。だとすれば、人魚を見た人は二度と魚が食べられなくなるはずだ。なぜならそれは僕が超能力少年時代にやった呪いだからだ。魚料理が嫌いだった僕はビニル袋に魚の卵を入れ、自分の精子を注ぎ、風船をつけて空へ飛ばしたのだ。僕は中二だった。
あ、あれ、ちょっと待てよ。
「ブロンド……?」
「ん、どうしたの?」
どうやら同じことをやったやつが海の向こうにもいたようだ。
(おわり)
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