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ある日のツァラストゥラ (作:高柴三聞)<希望の超短編>

 何処から沸いてきたか、汚い身なりの親父が壊れたカンテラ振り回して市場で何事か叫んでる。豊かな鼻髭とや
けに深みのある黒い瞳。立派すぎる人の中にはたまにおかしくなる人がいると言うからその類だろうと思う。かわいそうなんだな、きっとと思った。
 神は死んだとか男のなにやら物騒な叫びを聞きながら、荷台に積んだ南瓜の横で大きな欠伸を一つした。春風が気持ちよくてついうとうとしてしまった。
 目を覚ますと、まだ男はカンテラ振り回して叫んでいる。元気だな。おい。
「良いことも、悪いことも無い。すべては無価値だ。己を愛し給え。生きているならば自らの力の欲するままに生きよ。」
 鼻くそを丸めてつま先ではじくのを二回繰り返したあたりから、何となく、腹が立ってきた。こいつは自分勝手な奴に違いない。おまけに根くらだ。手ごろな棍棒でもないかあたりを見回した。
 「己を愛さないものが、他人を愛せるか」
 背中越しに、男の声が稲妻のように鳴り響いた気がした。自分の方がガツンとやられた気がした。
 「己のすべてを受け入れよ、己の運命を愛せよ。」
 考えてみりゃ、今まで自分の人生呪ってきてばかりではなかったか。不平と不満ばかりじゃなかったか。かわいそうだったのは、俺だ。急に身が引き締まり、気持ちが前向きになった気がした。
 お礼に、男の足元に南瓜を一つ置いた。男は驚いて何か俺に言いかけたけれど口元でむにゃむにゃと何事か呟いて、またカンテラを振り回しながら神は死んだと高らかに叫んだ。ありがとうといいたかったのかもしれない。
 それからあの男の姿は見ていない。けれど、どっかの市場できっと元気にカンテラを振り回しながら叫んでいるだろう。

(おわり)


著作権者は作者にあります。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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