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「眼球」

 太古より、かれらは年に数度ある謝恩祭を何より心待ちにしている。その夜すべての脳はいつもより深い夢に包まれて、神経の網がはずれ、かれらはにぎやかに出かけていく。ジャズピアニストは「夜は千の目をもつ」という歌を世に残したが、それは撹拌された夢のわき道で偶然その一景を嗅ぎとったに違いなかった。
 謝恩祭の日、かれらは同胞の過労死裁判を傍聴し、新しいオープンカフェでブルーベリーアイスをつまみ、大学で人種問題の討論会に参加し、エステサロンで乾燥肌をうるおす。人気のジムでは筋力を鍛えたり、プールでたっぷり遊泳したり。バーではビールなどの炭酸類は売れず、客はそろってソムリエの真似ごとをする。やがていつもの相棒と離れ、気の合う恋人を探しふたりきりでグラスをやさしく傾ける。明け方になるとそわそわしはじめ、内側に焼きつけた目醒めの時刻を互いに思い出し、再会の願いを抱き帰途につく。
 あのときピアニストは粗悪な粉末のせいで迂闊にも夢のかごから転がり出てしまったのだ。漆黒の眼窩をかばいつつ動物習性のようにピアノに座り、十本の長い指で美しい楽曲を奏でた。いわく口ずさんだ詩は、運命の出逢いは夜の目がみちびく――と。

(了)
「500文字の心臓」第57回タイトル競作の投稿作品。
結果、○4、△4でまずまずの戦績でした。前回につづきタカスギ票連続ゲットがちょっと嬉しい。
それにしても不狼児さんがあと一歩で正選王・逆選王同時受賞の快挙をやってのけるところでした。犬の肛門持ってくるとは恐れ入りました。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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 どーも~、逆選王です。下品なネタですいません。
 本人はそんなつもりはないのですが……だって犬の肛門って、いつ見ても見晴らしが良さそうじゃないですか。

 このところ続けてsleepdogさんの作品に触れられずじまいで、申し訳ないです。
 最近の作風が、絢爛としているようで透明な、めまぐるしいようで静かな、言葉を追っているうちに自分がどこにいるかわからなくなる感じで。
 自分の言葉で捕えられないもので、ついつい回避してしまって……もっと視野の広い言葉を持ちたいものです。

 リレー小説は堪能しました。みんな凄い!

 わーい。
 またsleepdogさんからポイントいただけました!d(^-^*
 ありがとうございました。ぺこ。

 私もsleepdogさんの作品になかなか触れられずじまいですみません。
 トーナメント、応援してますよん♪ 

お次のタイトルは

まだ正式に発表になってませんが、確か「富士山」でしたよね。
うーん、難しい……。

>不狼児さん
逆選王おめでとうございました。
いや、下品ではないですよ。ナンセンスの極みとして強烈な作品でした。
私の最近のはちょっと情景描写に懲りすぎてるかもしれないので、
もうちょっと言葉で捕らえられるものも書いていきますよ。
リレー小説はすごく個性が発揮されてましたよね。いつも競い合ってる
形式が多いので、ああいうチームワークはなかなか貴重な体験でした。
どうもありがとうございます。

>三里さん
なんとなく琴線に触れてしまうんですよね……。
トーナメントは今回も頑張りたいですね。三度目のチャレンジですしね。
まずは一回戦突破をめざしていきたいです。
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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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