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Ad Libitum (作:はやみかつとし) <希望の超短編>

1: spring

春が来ている。

春は、来ようとして来ること叶わず、来ない手前で来ようと地団駄を踏む。
子どもたちがそれを見つめて、春だねえ、春だ、と口々に言っている。

だから、まだ春ではないのである。

まだ春ではない。春が来ている。
まだ春ではない春が来ているので、春ではないが春が来ている。
そこまで。ここまで。どこまで。
どこまでも。
いちめんの春。いちめんのなのはな。
瞼の裏を菜の花と桜が埋めつくしたら、凍てつく風が吹き荒れていても、春は来ている。

そこまで。ここまで。



2: children

ここまでおいで。

子どもたちが手招きする。
春は、まだ見ぬ春になる春がもう来ているのかどうか考えあぐね、立ち止まっている。

実のところ、春は立ち止まるのには慣れている。
春爛漫のさなかに立ち止まっているのは 、ほんのりと上気するようで心地よい。
いつまででもそうして立ち止まっていたくなる。

でも、まだ見ぬ春だからと足が止まるようなことは今までなかった。
きっと、本当にまだ見たことのない季節が、やってくるのだ。
それがどんな季節なのか、春には見えない。
見えるのは、子どもたちの輝く顔。徐々に強さを増していく、まばゆい光。

子どもたちは、一生に一度だけめぐり来る今年の春を生きる。
精一杯の笑顔で手招きをする。春ごと、光ごと手繰り寄せる。

もうすぐ春が来る。

(おわり)


2011/3/16 作者サイトに掲載。いずれも未発表。著作権は作者にあります。
作者コメント:この数年間、毎年この時期に決まった機会のために書き続けた作品の中から、春への思いをテーマにした3点を選び、ここに掲載して2011年の春に捧げます。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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