スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ある日の悟浄 (作:高柴三聞) <希望の超短編>

 沙悟浄は、いつものごとく首を傾げ考えていた。流沙河の大河の底の一万三千もの妖魔達は、この変わり者の事を誰も相手にしていなかった。とどのつまり、いつものことなのである。
 赤の服を纏った童子の姿をした金魚の精と黒い服を纏った童子の姿の黒出目金の精が、  
 腕組みして悩んでいる悟浄の周りを取り囲んで囃すように問いかけた。
「今日は、何を悩んでいるの」
「今日も、難しい顔してさ」
 そして童子達は口を揃えて言った。
「川の暮らしは楽しいことばかり、何を難しく考えているのかしら。」
 自らの頭がよほど重いのか吾浄は自らの首をさらに傾げて何事か呟こうとしたがやめにした。童子達にさらにからかわれるに決まっている。沙悟浄が難しく物事を考えるようになったのは無理もないことである。天界で罪を得て捲簾将の任を剥奪され八百回鞭打たれて姿を変えられ流沙河に落とされたのだ。おまけに七日に一回は剣が天界から落ちてきて刺し貫くのである。悩まない方がどうかしている。ついでに言うと、その頃の悟浄はまだ、悟浄ですらなかった。その名は仏門に帰依したときに名づけられた名なのである。
 何でもない妖魔は、未だ自分が何者で何を為すべきかわからず悩んでいたのである。
 彼が、自分が為すべきことを見つけるのはずっと先の話である。流沙河の一万三千もの妖魔の中で何者でもない悟浄は煩悶苦悶していたのである。後に三蔵に弟子入りし沙和尚とあだ名されるのだが、弟子入り前から道を求めでいたが故なのだろう。もうすでに風格があった。求道の道は長くて先のわからない道なのだけれど、暗い道の先にはぱっと明るい原野が広がる事もあるのだろうと思う。
 さて、吾らが沙悟浄は…。嗚呼、童子姿の妖魔に相変わらず悪戯されてる。あ、右耳と左耳引っ張られてる。はてさて、充分頑張っている吾らが沙悟浄だけども、それでもやはり頑張れと声をかけたくなる。頑張れ。あと、もう少し笑え。

(おわり)


著作権は作者にあります。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
スポンサーサイト

テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリー
ブログ内検索・作者検索
プロフィール

sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

後輩書記シリーズ公式サイト

ビジター数
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。