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きみの希望は (作:かおるさとー) <希望の超短編>

「ねえ」
 呼びかける声が、きみの口から洩れる。
 辿り着いたお宝を見据えるように、きみはそっと顔を上げる。
「私が今からすることは自然なことかな」
 きみは不安げに顔を曇らせる。
「私はこれまで、独り立ちしてから誰にも頼らずに生きてきた。両親はいないし、金もコネもなかった。住む家もなかった。まあトレジャーハンターとしては、身軽な方がいいんだけど」
 短い髪をかき上げて、きみは弱気な声でつぶやく。
「今までいろんな人間に会ってきたけど、いい奴より悪い奴の方が多かったのよね。騙された回数も親切にしてもらった回数より多いし、騙されそうになった回数はもっと多い。だから、今私が見つけたお宝を、誰かのために使う必要なんて、本当にないと思う」
 さびしげな声は、同じようにさびしげに広がる大空洞の中で、浸透するようにさびしく消える。
「そう、これを伝える必要はない。私だけのものにしてもいいし、今この場で破壊してもいい。私にはその権利がある。だって、私が見つけたんだから」
 きみはさびしげにお宝を睨み付ける。
 その目は鋭いけど、しかしきっと憎しみはない。恨みも嫉みも妬みも僻みも、きっとここには存在しない。
 あるのはきみの輝く瞳と、そして価値あるお宝だけだ。
 きみじゃなければ、たぶんここには辿り着けなかっただろう。
 艱難辛苦を乗り越えて、しかしここには絶望しかなかった。どこまでいっても希望はなかった。
 なのにきみは、
「……まあ、ぶっちゃけ結論はもう出てるんだけどね」
 きみの瞳には、輝く希望しかない。
「これがあれば、きっとたくさんの命が救える。星そのものを癒す力を持つ『鴻均』。あなたを、ここから連れ出す」
 強い決意が漲った目に、躊躇いの色はなかった。
 きみが見つけた希望は、きみの未来さえ奪うというのに。
「知ってるよ」
 きみは明るく答える。
「『鴻均』、あなたを使うには誰かの命が必要。生け贄の生命力を変換増幅して、星の生命維持に回すために。つまり、私の命が必要」
 淡々と語るきみの声には、どこまでも憎しみの響きはない。
「仕方ないじゃない。見つけちゃったんだから。そして他に押し付けるわけにもいかないなら……私がやるしかないじゃない」
 きみはそう言って、はにかんだ。
「好きなんだから、この世界が。戦争でぼろぼろに荒廃したどうしようもない世界でも、好きなんだから、この星のすべてが」
 そっとお宝を抱きかかえる。
「がんばってこの星を治してね。あなたは世界の希望なんだから」
 友人に託すように語り掛けると、きみは何の迷いもなく、静かにお宝を起動させた。
 きみが見せた最期の笑顔は、流れ星のように輝いて、消えた。

 たとえ星を治しても、人は争う。
 だけど、きみみたいな希望が存在するのなら、この星の未来はきっと――。

(おわり)


2011/03/17 作者サイトに掲載。著作権は作者にあります。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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