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同居人 (作:まあぷる) <希望の超短編>

 私は一人暮らしだが、ちょっと変わった同居人がいた。最初、彼女は夜中に寝ている私の首を絞めに来たのだ。だが、その日たまたまニンニクたっぷりの餃子を食べていた為、息を吹きかけたら相手のほうがひっくり返ってしまった。
 翌日の朝から、彼女は普通に出てくるようになった。穏やかな表情を浮かべた彼女の顔は何故かちっとも怖くなかった。何をするとか、喋るわけでもないのだけど、何だか一人でいるよりずっと心強い気がした。
 一緒にテレビを見ると、時々勝手にチャンネルを変えられてしまうのはちょっと困ったが(嵐が好きらしい)、食事の時は彼女の分も置いてやった。食べるわけじゃないけど、ちょっと嬉しそうな顔をするので心がなごんだ。
 
 今度の震災の映像を見ていたら、彼女がドアをすり抜けて外に出て行くのが見えた。急いで後を追ってみると、駅前がざわついているのに気付いた。
 なんと、広場の中心で彼女が歌っている。その声は美しく、心の奥底に染みわたるようだった。歌が終わると、彼女の前に置かれた段ボール箱に次々とお金が入れられていく。人々が立ち去った後、彼女は段ボールを私に手渡しながら、ふわりと幸せそうな笑顔を浮かべ、ありがとう、と呟くとゆっくりと空へ昇って行った。
 
 私は、そのお金を寄付した。
 名も知らぬ幽霊だった彼女の善意が、明日の希望へと変わるように。
 今日、私は絵を描き始めた。駅前で歌う天使のように美しい彼女の絵を。
 彼女の顔を、彼女の歌声を、しっかりと記憶の中に留める為に。

(おわり)


著作権は作者にあります。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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