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きつといつかのぞみかなう[Bitter but Better](作:卯月音由杞)<希望の超短編>

 ぼくがまだ小学生で(男子たちの幼稚さに鼻を鳴らしていた年頃)純真な心を持つ美少女だったときの話(一応言っておくが今も美少女だ)。その日は友達の誘いも断り、急いで学校から帰ったのを覚えてる(もうマフラーを巻くほど寒くない、と思ったことも)。
「さあやろうか」
 なんて言って、もう歳の離れた兄貴はキッチンで準備をしてた。材料と道具を揃えてエプロンまで着けてたな(わざわざ買ってきた割に兄貴のひょろ長い背丈に合ってなかった)。でもそれは好都合。当時高校生だった姉が帰ってくる前に終わらせなければ(兄貴はいつも家にいたが、何してたんだろう)。
「生クリームはこれくらい?」
「ほら、そんな風にナイフを持ったら危ないよ」
「ココアパウダーは? ああそこか、自分で出すよ」
 なんて調子でぼくを頼ったり子供扱いしたりで(兄貴は子供みたいにつまみ食いしてた)大騒ぎだったけど、どうにかあとは冷やすだけってとこまでこぎつけたんだ。
「どうなるかと思ったけど、作れるもんだね」
 ほとんどぼくが作ったのに失礼な、と思ったが、なんとかなるもんさ、ということを(一応頼もしげな目で見ながら)請合っておいた。

 太陽が沈む頃、疲れた顔で帰ってきた姉をぼくらは笑顔で(兄貴はいつものへらへら笑いだ)迎えた。美人のくせに(何せぼくの姉だ)いつもみたいにそっけない。
「なに、二人ともにやにやして。頭でも打ったの」
「ホワイトデーの贈り物です!」
 ぼくらは後ろ手に隠した、夕方からのドタバタが生み出した成果を姉に差し出した。
 いくつもの小さな白と黒の生チョコで書いた『HOPE』の文字。
「ど、どしたのこれ……作ったの?」
「家族みんなの名前は英語でどういう意味か、小学校でそんな授業あったみたいでさ」
 だから最近元気のない姉を励まそうと作ったのだ、とぼくは告げた(兄貴がえらく乗り気だったことも)。
 姉はしばらく黙って見つめてたけど、急に手を伸ばして生チョコを一粒とり、食べた。
「ちょっと苦い。おっかしい、形も揃ってないし」
 いびつで苦くてすぐ溶けるけど食べると元気になるだろ、と兄貴が得意げに言う(こういう言い逃れだけは上手いのだ)。
「ありがとう。でもそれなら」
 ぼくの頭を撫でながら(今日ばかりは子供扱いも受け入れた)ノゾミ姉ちゃんはやっと笑顔になって言ってくれたんだ。
「兄弟四人ぶん作らなきゃ。『Someday Hope Will Come-True』って。材料まだある?」

(おわり)


著作権は作者にあります。
作者コメント:こんなの作ったって何が変わるわけじゃないけど、非常食にはなる。ちょっと落ち着く。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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