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星空のメッセージ (作:30-06) <希望の超短編>

 私は、宇宙人である。
 私はこの惑星を征服するため一人、遠い星からやって来た。
 征服計画は着々と進行中である。
 その恐るべし数々の破壊工作で、人類を恐怖のどん底に突き落としてやるのだ。
 先ず手始めに、アルバイトで貯めたお小遣いで大量のバナナを購入し、連日ひたすら食い続けた。
 そして、大量に溜まったバナナの皮を、繁華街の歩道にばらまく。
 名付けて、『バナナの皮を踏んですってんころりん作戦』である。
 ゴミを捨てるなと叱られた。やむなく私は作戦を変更する。
 私は住宅街に赴き、門前のインターフォンのスイッチを押しては姿を消すという、大胆不敵な攻撃に出る。
 名付けて、『ピンポンダッシュ作戦』。
 三日で飽きた。ではなく、体力ばかりを消耗するだけで効率が悪い事に気付いたのだ。
 もっと効率が良く、悪の限りを尽くせる作戦は無いものか。
 ここに、一枚の500円硬貨がある。
 これはこの惑星の通貨であり、これ一枚で弁当一食分に相当する貴重なものである。
 私はこの500円硬貨を、歩道のタイルの上に瞬間接着剤で貼り付け、物陰から様子を伺った。
 一人の男性が歩いて来た。
 その男は私が貼り付けた500円硬貨を発見し、周囲を伺うと足の裏で踏みつけ隠す。
 靴紐を直すふりをして、その500円硬貨を拾い上げようとした。
 その男に、焦りの表情が浮かぶ。
 作戦は成功である。
 だがその時、男はビクトリノックスのツールナイフをポケットから取り出し、ドライバーの付いたブレードをぱちんと開くと、それで歩道に張り付けられた500円硬貨を剥がし始めた。
 おいやめろ。何をする。
 その男は剥がした500円硬貨をポケットに仕舞うと、悠々と立ち去って行った。
 私の500円を返せ。それは私の生活費である。
 私は生計を立てるためのアルバイトの帰り、夜空を見上げる。
 この満天の星空の彼方に、私の故郷がある。
 もう帰りたいと思った。挫けていた。
 突然足下が何かで滑り、私は尻餅をつく。
 誰だ、こんな所にバナナの皮を捨てた者は。
 紛れもなく私だ。
 絶望と孤独と悲しみが、私の思考を支配する。
 その時だった。路上に座り込んだ私の聴覚神経が、何かの鳴き声を捉えた。
 私の側に白と黒の体毛に覆われた小さな生物が、にゃぁにゃぁと鳴き声を上げて寄って来る。
 私はその生物をそっと抱え上げる。
 その生物はごろごろをいう異音を発し、私の顔を覗き込んだ。
 なんという柔らかさ。暖かさ。
 今まで私を支配していた孤独感が、嘘のように消え去ってゆく。
 私はその生物を抱き、家路を急ぐ。
 見上げた星空には、数え切れない程の希望の光が瞬いていた。
 その日、私に家族ができた。
 この小さな生命を守りたい。そんな想いが、私に勇気を与えてくれた。
 私は負けない。いつか必ず、この惑星を征服してみせる。
 私は、宇宙人である。

(おわり)


著作権は作者にあります。
作者コメント:1,000文字を少々超えてしまいました、てへっ。そして、いつものペースです。
管理人コメント:77作品目です! おねだりが若干気持ち悪いですが、字数オーバーは大目に見ましょう!

疲れた心に安らぎと光明を。母星に届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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