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開花宣言 (作:宣芳まゆり) <希望の超短編>

管理人コメント:こちらに朗読版(朗読者:鈴子さん)があります。パソコン向けです。


甘い、優しい匂いがする。
小さな蕾が開く。
梅の花が咲いたよ。
いつも見ている、線路脇のまだ若い木の。
冬の寒さに耐えて今、咲き誇ろうとしている。

もう会わないと言ったときの、息の白さ、街灯の明るさを覚えている?
君は、冬の夜の寒さにふるえる私に、ホットココアを買ってくれたね。
缶を渡すときの、少しだけ泣きそうな顔を見ていたよ。
誰もいない公園のブランコをこいで、必ず追いかけると言った。
たった一つの年の差が、こうゆうときに切なくさせるから。
首に巻いたマフラーに顔をうずめて、君の鳴らすブランコの音を聞いていたよ。
私の大学で再会しようなんて、かっこつけないで。

年が明けてから三回、雪が降ったね。
舞いおどる粉雪に、子どもたちがはしゃいでいたよ。
君は、空を見上げた?
それとも、机にかじりついていた?
無理をしていないか、体を壊していないか、心配だよ。
がむしゃらにがんばりすぎて、足もとが見えなくなる癖に気をつけて。

大学に試験を受けに来た君を探したけれど、気配しか見つけられなくて。
君の方が大変なのに、私の方が泣きたくなる。
今、どうしている?
元気でいる?
笑顔でいる?
君との約束を信じて、私は待っている。
この、銀杏並木があるキャンパスで。

まだ冷たい風にふるえて、それでも線路脇の木に、春の訪れを感じる。
梅の花が咲いたよ。
いつも、君を見ていたよ。
一つ年下で、意地っ張りなところのある君を。
君の花が咲くことを、願っている。
今、そばにいなくても。
心は寄りそっている。

特急列車と二台の普通列車が、目の前をにぎやかに走る。
なかなか開かないと学生の間で評判の、踏み切りのレバーが上がる。
線路の向こう、人ごみの中、懐かしい顔を見つけて。
花開く、その瞬間を捕まえて。
私はもう、何も聞かなくていいことを知った。

(おわり)


2011/03/18 作者サイトに掲載。著作権は作者にあります。
作者コメント:できるだけ多くの命、未来、心が守られますように、願いをこめて。
管理人コメント:こちらに朗読版(朗読者:鈴子さん)があります。パソコン向けです。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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