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新しいお得意先 (作:立田) ♪希望のポケット童話

 ぼくは、この町のクリーニング屋だ。
 あの日、ぼくは、ワゴン車でお得意先を回っていた。<剣の舞>を聞きながら。集中しないといけないときは、ぼくはいつもこの曲をかけていた。たとえば、アイロンをかけるときや、運転中に。
 お得意先を回り終えたとき、ぼくは山の上の空き地に着いていた。すると、目の前には一週間前にはなかった家が建っていた。その家はどこもかしこも空色で、まるで空に溶け込んでいるようだった。
 そして、家の空色のドアノブには『クリーニング屋さんへ』と書かれた、大きい空色の袋が下がっていた。
 すごく空色の好きな人がすんでいるんだろうな。とぼくはノブから袋を取り外して思った。
 袋の中には、白いシーツ。いや、汚れた、前には白かったはずのシーツが入っていて、その上にやはり空色のメモが付いていた。
『洗ったら、必ず、じゅうぶんに太陽に当ててください。お願いします。』
 それだけ。名前はなし。だからぼくは読み終わったとき、だれかのイタズラじゃないか、と思った。でもとにかくすごく汚いシーツだし、洗ってほしいことはまちがいないだろう。この家を忘れずに後で持ってくればいいことだ、と考えて、ぼくは袋を持って帰ることにした。

 店に帰って袋から出してみると、シーツは、どうやってこんなに入ったのだろう、と思うほどの量だった。ぼくはたいへんな苦労をしながら、シーツをぜんぶ洗濯機に放り込み、洗剤を入れて、スイッチを押した。
 しばらくして洗濯機が止まったので、ふたを開けてみると、湯気がもうもうと立ちのぼった。
 いや、湯気じゃない、なんだろう? ぼくは驚いて、そのはしっこをつかんだ。すると、体重がなくなったようにぼくの足は床から離れ、ちょうど開いていた窓から外へ出てしまった。
 ぼくは、必死でその空飛ぶもくもくをつかみ、よじのぼった。なんと、ぼくが洗濯したのは、雲だったのだ!
 雲は、ぼくの住んでいる町の空を一周すると、ぼくを店の屋根にそっとおろして飛んでいってしまった。
 ぼくは、心配になった。あれはまだ太陽の光で乾かしていないけどよかったのかな?
 だけど、それでよかったらしい。それからというもの、ぼくはずっと雲の洗濯を頼まれているのだ。

 そして、そのせいで、このごろちょっと困っていることがある。天気のいい日は、<剣の舞>を聞いても、なかなか集中できないのだ。自分の洗った雲のようすが気になって、青空をしょっちゅう眺めているせいで。

(おわり)


著作権は作者にあります。
作者コメント:パブーに他の童話の電子絵本があります。⇒こちら(パソコン&スマートフォン向け)

未来に夢と希望を、そして灯火を。ポケットの中の童話。
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テーマ : 児童文学・童話・絵本
ジャンル : 小説・文学

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Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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