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河童 (作:高柴三聞) <希望の超短編>

「このところ、どうも様子がおかしい。」
 深い沼の中で、ある一匹の河童が腕組みした。ある日を境に総てが変わってしまった気がする。大津波とか山火事とか大地震とか、仲間の河童たちは噂し合っている。沼から頭を出してひやりとした空気に当たるのが平生から好きな河童であったが、このところの外界の空気は悲しみと苦しみに満ちている。ただ事ではない。おまけに最近、淀んだ頭の痛くなるなにか澱みのようなものまで混じってきている。
 この河童はある夜、決心して河童秘伝の薬やら食べ物やらを背負って山を下り、さらにもうひと山越えて人間たちの様子を窺いに行った。途中、地割れや土砂崩れの跡が何か所もあった。何とかたどり着いた人間の町の有様を見て愕然とした。人間たちの建物は殆ど潰れてしまっている。おまけに、悲しい空気が酷く充満している。何ともひどい有様に呆然として町を眺めていた。
 潰れた家の横に一匹の犬が泥まみれになってぐったりとしている。取りあえず、河童はこの犬を助けてやることに決めた。河童秘伝のドロドロした薬を体中にぺたぺたと塗りたくってやると、生気を少し吹き返した。繋がっている鎖も外してやった。
 河童には犬の言葉はわからぬが、何となく気持ちは伝わる。犬は二、三度頭を下げて河童に感謝の意を示すとよろよろと歩き始めた。犬は、飼い主の所へ行くのだと言う。
 あの弱り方では、長くはもつまいと河童は悲痛の面持ちで呟いた。しかし、河童はあの犬が飼い主と再会出来れば、飼い主もきっと希望を得る事が出来るだろうとも思った。
 よろよろと懸命にあゆみ続ける犬を見つめながら河童は、犬の飼い主の無事を祈った。
 河童は、踵を返すと仲間や家族たちのいる沼を急いで目指した。自分たちがこれから何をできるか相談するために。

(おわり)


著作権は作者にあります。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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