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南天、南天 (作:沖川英子) ♪希望のポケット童話

 朝起きたら、頭が痛くて、胸がもやもやして、朝ごはんどころじゃなかった。すごく怖い夢を見たのだ。

 そんなわたしを見ておばあちゃんは、悪い夢は南天の木に話してしまいなさい、と言った。

 わたしはおばあちゃんの言うとおりに庭の隅に行って南天に話しかけようとしたのだけれど、急に心配になった。

 嫌な夢の話を聞いて、南天は枯れてしまわないかしら?

 そこでわたしは南天にきいてみた。

「南天、南天。悪い夢ばかり聞いて、あなたは平気?」

 南天はしゃらしゃらと優しく揺れた。

「ええ、大丈夫。悪い夢はみんな実にしてしまいます」

 赤いきれいな実がいっぱい、ころころとかわいく枝になっていたけれど、それでも心配でわたしはきいてみた。

「南天、南天。その実はどうするの?」

 南天はふるふると笑って実を揺すった。

「仲良しの小鳥たちがみんな食べてくれますよ」

 それを聞いてとっても心配になって、わたしはきいてみた。

「南天、南天。悪い夢の実を食べて、小鳥たちはお腹をこわさないかしら?」

 南天はさらさらと静かにささやいた。

「大丈夫、小鳥のお腹はとっても丈夫。残るのは小さな種だけです」

 それでもまだまだ心配で、わたしはまたきいてみた。

「南天、南天。種はちゃんと芽を出せるかしら?」

 南天はゆらゆらとうなずいた。

「大丈夫、かわいい芽が出て、すくすく伸びて、立派な大人の木になりますよ」

 ちょっとほっとしたけれど、わたしはもう一度きいてみた。

「南天、南天。その木はどうなるの?」

 南天はざざっと微笑んだ。

「どこかのお庭で、誰かの悪い夢を聞くのですよ。私がそうしているように」

「枯れてしまわない?」

「ええ、大丈夫」

 そう言うと、南天は濃い緑の葉っぱで優しくわたしのほっぺたをなでた。

「だから、話してくださいな。何がそんなに怖かったの?」

 そこでわたしは安心して、今朝の悪い夢をぜんぶ、南天に話した。そうしたら、胸の中がすうすうして、頭が痛いのも治ったみたいだった。

「ありがとう、南天」

 幹に触ってお礼を言って、最後にわたしは言った。

「南天、南天。あなたが悪い夢を見たら、わたしが聞いてあげるね」

 南天はわたしの頭を優しくなでた。

 わたしはとってもとっても元気になったので、南天にさよならを言って家の中に帰ることにした。

 朝ごはんのいいにおい。お腹がぐうっと鳴いた。

(おわり)


著作権は作者にあります。

未来に夢と希望を、そして灯火を。ポケットの中の童話。
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テーマ : 児童文学・童話・絵本
ジャンル : 小説・文学

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Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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