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もうちょっとだけ待って (作:まつじ) <希望の超短編>

「恋の病じゃ」
 と、仙人みたいな医者に言われて、やっぱりなと思う。
 やはり病気だったか。
「あなたが好きです」

 ある日突然、ぼくは往来で「あなたが好きですあなたが好きです」と叫び、それを聞きつけた警察がぼくの身分証明を確認すると
「19才だぞ」
 たちまち補導されてしまった。しかし何を聞かれても「あなたが好きです」しか言えなくなっていたので警察もこまり、ぼくは「あなたが好きです」を連呼しながらかかりつけの病院の名前を紙に書いてパトカーで送ってもらったというわけだった。
 恋は二十歳になってから。というステッカーが車に貼ってあった。恋愛はあなたの健康をそこなうおそれがあります。
 そういうことなのだった。
 
「これは末期症状じゃ」
 と病院のじいさんはひとり頷き、ぼくはといえば
「あなたが好きです」
「うむ、末期」
 一応症状をおさえる薬があるというのでその場でそれを飲んでしまうと、じきに落ち着いた。
「あなたが」
 じいさんが白いヒゲをさすりながらこちらを見ている。
「いや、好きじゃない」
 よし、大丈夫。なぜだかたいへんうれしい。
 医者は、ぼくがながい間ずっとおなじ人を、えーと、あれだ、あの、ナニでいるのがこの病気の原因なのだ、とゴニョゴニョ言った。
 そうかそう言われてみれば、それはもう幼稚園のちいさなころからすっかりす、あいやその、ナニだったなあ。
 ぼくが胸を張ると、たいしたもんだ、とじいさんが驚く。
 小学生のとき、あんまり好きなのでその旨本人に伝えたところ、それを見ていたクラスの女子が先生に密告し不純異性交遊です云々とこっぴどく怒られたことがある。ぼくの好きだったその子はどうしていいのかわからなかったのか、うえええん、と泣いてしまったから、悪いことしたと思う。
 大人になるまで待とう、とそれからずっと我慢してきたのだ。
「薬、余分に持っておくか」
 じいさんはニコニコしながら、ぼくを見送ってくれた。
「いや平気、あした誕生日だから」
 と答えると、どういうわけか、もっとうれしそうな顔をした。

 翌日、ぼくは彼女にもう一度告白をした。いままで抑えていたせいか、通りで彼女を見つけるやもうほとんど無意識に叫んでしまっていた。
 よしやった、と一人充実感に浸っていたら彼女がまた、うえええ、と泣き出すので困ってしまう。どうしたのなんでなんで、と聞くと
「あたし来月誕生日なの」
 むこうから警官が走ってくるのが見えた。

(おわり)


著作権は作者にあります。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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