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大山さん (作:まつじ) <希望の超短編>

「こんちは、毎度、メイドでございます。」
 と言って家にやって来たのは四十くらいになるか、ぽちゃり太ったおばさんだった。
「チェンジお願いできますか。」
「無理です。」
 そんな予感はしていた。

「メイドってほら、こんなんじゃないでしょう。」
 ずかずかと部屋に上がりこむや、ああ汚いこれはひどいわあー、と片付けをはじめたおばさんに向かって僕は抗議をしてはみたが案の定取り合ってくれなかった。
 とりあえず片付けが済むまで待ってみる。おばさんは、ああ疲れた。
「メイドってほら、こんなんじゃないでしょう。」
 再び挑戦。
「こんなんですよ。あ、この度派遣されてきた大山と申します。」
 おばさんの挨拶はとても丁寧だったので、思わずこちらも「どうも」とお辞儀を返す。
「あいや、だからこんなんじゃないでしょう。」
「だからこんなんですよ。」
「メイドってだってメイド服でしょう普通。」
 とそこまで言って、この人にメイド服を着られてもまいるなあと思う。「メイド、とどけます。」と印刷されたチラシが机の上に乗ったままになっている。
「いやいや、あたし親の転勤で海外に住んでいましたけど、うちで雇っていたメイドはこんなんでしたよ。」
 エプロンをひらひらさせるおばさんはTシャツにズボンという出で立ち、聞くとその国に住んでいる日本人の半分くらいはメイドを雇っていたらしかった。そうだったのか。
 しかし。
「そんなこと言われてもなあ。」
「メイド服って何です?」
「何でもないです。」
 勝てる気がしない、と思っているとおばさんは、あらやだもうこんな時間ご飯つくらなくちゃと台所に立つので僕はその背中を見守りちょっと溜息をつくのだった。

 恋人はいるのかファーストキスは済んだのかもしまだならあたしとワッハッハとおばさんは食べてる間中話しかけてきて肝をつぶしたりしたが、予想外と言ってはなんだけれど料理の方は、一番安いからなあと色々諦めていた気持ちがひっくりかえるくらいムチャクチャ美味しかった。
 と言うわけで、二度目の大山さんは「めいどめいど、ありがとうございます」、うちの台所でテキパキと働きながら演歌を歌っている。
 駄洒落も演歌もいいけど、メイド服はやめてくださいとお願いした。

(おわり)


著作権は作者にあります。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望のメイド服。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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