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Yと僕とマイケル・ジャクソン (作:楽遊) <希望の超短編>

「先生! 有名になりたいです!」
 昼休み、手を挙げて僕にそう言ったのはYだった。彼は本名を五井直太という。本人が希望するのでYと呼んでいる。
「先生! 反応してくれないと寂しいです!」
「有名になったらいい」
 Yは顔を輝かせた。
「先生が有名にしてください!」
「他力本願とは感心しないな」
 僕はYの同級生で、当然先生ではないけれど、なぜだかYは僕を先生と呼ぶ。今ではクラスで先生と言えば僕のことだ。本当の先生達はなぜだか教授と呼ばれている。化学の佐原はうちのクラスでだけやけに機嫌がいい。
「有名にしてください!」
「……どれくらい有名になりたいんだい」
 Yは少し考えて、
「マイケル・ジャクソン!」
「とても大きく出たね」
「目標は大きく!」
「それは感心なことだ」
「俺は世界のMJになる!」
「世界のNGだよ」
「Naota Goi,Yes! いやNo! 世界のY!」
「どうでもいいよね」
「うん、有名になれればどうでもいいや」
「いいんだ」
「それでどうしたらMJになれるんだい? 先生」
 僕は考えた。こんな風にYが絡み出したら、適当な餌を与えて満足させるしかないんだ。
「MJになればいいんじゃないかな」
「どういうことだい、先生」
「モノマネだよ」
「待ってくれ、先生。世界中にMJのモノマナーがどれだけいると思ってるんだい?」
「モノマナー?」
「今更MJのモノマネ、ポゥ! したところで有名どころか二百番煎じさ」
 Yの主張はこんな時だけ理路整然だ。僕はため息、
「それなら鉄棒の上でムーンウォークとか、今までだれもしたことがないことをしたらどうかな」
「なるほど! さすが先生!」
「え?」
 こうと決めたYの行動は早い。十分後、僕は校庭の鉄棒の前で『生徒会』とシールが貼られたビデオカメラを構えさせられていた。もうすぐ授業なのに。
「先生、ちゃんと撮っててよ!」
 しかもオチも見えたよね。
 Yは鉄棒のヘリに飛び乗った。両腕でバランスを取って揺れ、落ち着いたところでムーンウォークスタイルに格好付ける。
「いくよ先生! I'm Michael Jackson!」
 Yは棒に沿って片足を一歩後ろに滑らせた。二歩目で落ちた。
「Ah」
 棒を挟んで両足がすり抜ける。鉄と股間がSmooth Criminal.
 Yは、空を仰いだ。
「ッポゥッッッ!!」



 その後、某動画サイトに映像を投稿してみたら、Yは世界でちょっとだけ有名になった。
 Yはとても喜んだ。
 そして今日も元気に手を挙げている。
「先生! マリリン・モンローになりたいです!」

(おわり)


著作権は作者にあります。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望のムーンウォーク。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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