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恋占いの君 (作:本田モカ) <希望の超短編>

「京都の地主神社の御本殿の前に少し離してニつの石が置いてある。
これが有名な恋占いの石である。ニつの石の間の距離は十メートルほどだが、目を閉じて歩くとこれが何倍の距離もあるように感じられる。
なぜそのようなことをするのかというと、もう一方の石までたどり着くと恋が成就すると言われているからだ。そう恋は神頼み!
いわゆる他力本願な乙女達は今日もあっちにフラフラ、こっちにフラフラと手を広げて歩き出す。そんな愛に飢える恋愛☆ゾンビな乙女達の姿を見ても観光客は笑ってはいけない。がんばれ、空を舞う手に愛を掴むその日まで!」
 
カフェに入り椅子に座るまでイヤミなナレーションがずっと耳の横で流れていた。
「……もう、うるさい!大人しくお茶飲んでよ」

幼馴染みのショータが見ていてくれたら、恋占いの石のチャレンジをがんばれると思っていたのに、人にぶつかりそうな気配が怖くて思わず目を開けてしまった。
「だいたい、神様にどうにかしてもらおうなんて考えが甘いんだよ。だからゆとり教育は駄目だって言われるんだぞ」
ショータは笑いながらカップに口をつけた。
「だって、友達は恋が成就したんだもの」
溜息混じりに私は答えた。
両想いになれる可能性が少しでもあるならやってみようと思った。
人の気持ちも知らないで……。そう思うといろんな感情がこみ上げてきて目の辺りがじんわりと熱くなっていった。


すぐ目の前にはあるのにたどり着けない。
幼馴染みという距離は近そうに見えて実は遠い。
もう片方の石は、まるでショータみたいだった。


「私には触れることはできないのかな……」
石にも、ショータにも。
独り言のように呟きながら空に伸ばしたその手をいきなりショータがつかんだ。
「俺はただ自分の信じた通りに進んだら石にたどりつけたけどね。
まったく、お前が成功して目を開けた瞬間に言う予定だったのに、俺の計画は大失敗だよ」
きょとんとする私を見ながら少し赤い顔をしてショータは続けた。
「……いい加減に気づけよ、このバカ!」

彼もまた悩める恋愛☆ゾンビの一人だったらしい。
その瞬間、私は心の底から笑い、そしてうれしくて少し泣いた。

(おわり)


著作権は作者にあります。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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