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棒アイス (作:道三) <希望の超短編>

 熱で空気が揺らぎ、太陽も揺れていた。
 背広を抱えて汗を拭う。足が重く、息があがる。暑さに負けて体力が奪われているのだ。「道理で」と苦笑す
る。
 道理で、あと半年で定年になるわけだ。頭の中は若いつもりでも、自分の体も周囲の人間も、歳に見合った反
応をする。古女房と二人、これからどう生きれば――。
 ファミレスで涼を求めたいが、あたりにはコンビニと公園があるだけだ。むやみに近道なんぞするもんじゃな
い。とりあえず日陰を宿した公園のベンチに座ると、小学校低学年ぐらいの男の子がやってきた。
 一人でジャングルジムで遊び、一人でブランコを漕ぐ。その様子が、東京に住む一人息子の子ども時代と重な
った。そうだ、あの子にもこんなに小さな時期があった。
「なあ、ボク」
 なにということもなく、声をかけた。男の子はブランコを止め、
「なに?」
「いや、喉渇かへんか、思うてな」
「水筒持ってんねん。ジュース入ってるし」
 小さな胸を張って得意げに水筒を見せつける。なかなか生意気でしっかりした子や。
「ジュースは後のお楽しみにしたらエエやん。おっちゃん喉渇いたからアイス買うんやけど、一緒に買うたろ思
うてな」
 いいおっさんが一人公園でアイスを食うという絵柄は願い下げだが、小さい子と一緒ならまあ許せる。
「知らん人に物買うてもらったらアカンねん」
「要らんならエエわ。おっちゃんは二個買う。でも一個しか食わへんから、誰かにもらってもらわんと困る」
 結局、二人でブランコに座り、棒アイスを食べることにした。
 一口頬張ると一瞬は喉の渇きが癒えるが、甘ったるさでまたすぐ渇く。それしても暑い。憎たらしいと太陽を
睨み付けていると、いきなりアイスが解けて足下に落ちた。
「勿体ないなぁ」
 同じ失敗はすまいと思ったか、男の子は大口を開けて残りのアイスにぱくついた。
 足元でだらしなく解ける乳白色のアイス。まるで俺の人生のようだ。汗を拭って項垂れた。
「なんや、あたってるやん」
 大きな声に促されて目をやると、解けたアイスから当たりマークが顔を出していた。
「もう一回やな、おっちゃん」
 邪気のない声がスッと入り込み、頭の中で響いた。
(もう一回ガンバレってか? 出来過ぎた話や)
 頭を振って立ち上がった。まんざら悪い気分ではない。
「おっちゃん、もう一本もらってくるわ。ボクの分も買うたるし、一緒に食べよか」

(おわり)


著作権は作者にあります。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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