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流星の街 (作:高橋京希) <希望の超短編>

 街の灯りが強制的に消えて、夜空には満点の星が甦った。
 直ぐには叶わない願いを何度も何度も繰り返し流星に託す少女の頬を伝う涙も、あたかも流星に思える。
 どうにか彼女の願いぐらいは叶えてやれないものか。
 溜息は白い風になり、夜空に舞ってどこかへ消えた。
 体と心が分解されそうだ。現実感のない日々は、同じく現実感のない大地の鼓動で脆くも崩れ去り、今こうして曝された精神は、こんなにもか弱く、豊かだったとは思いもよらなかった。
 昨日までの自分であれば、少女の気持ちを理解できたであろうか。疑わしいものである。
「それじゃあ一緒に探そうか」
 何を?
「あのね、お母さんが買ってくれたね、クマのね、ぬいぐるみ」
 夜は危険だと判っていても、少女は静止も聞かず、監視の目をくぐり抜け、避難所を抜け出してしまった。今、他のご家族も彼女の事を必死に探している。僕はただ、隣に居ただけであったが、事情を見聞きしていた手前、同じように探しに出てきたのだ。であれば、彼女を保護したからには、そのまま帰るのが筋だろう。しかし、決意を湛えた瑠璃色の眼差しに見据えられては、その動機も揺らぐ。
「判った。それじゃあお兄ちゃんが少し残って探すから、君はもう帰ろうね」
 そう言って、僕は、声を上げ付近のしわがれたご家族を呼び、その子を託す。
 残った僕は、夜通し目当ての物を探したが、それは、見下ろす数多の星から、異星人の存在の根拠を示すに等しい作業であった。
 いつしか僕は元道路であっただろう地面に寝転がり、星に押しつぶされそうになっていた。
 僕はあの子の涙に、何を願った? 自分の事など願わなかった、そうだろう? だから、お願いだ。あの子の小さな願いを叶えてはくれまいか。
 背中に感じる寝心地の悪さに、ふと上半身を起こすと、キラリ輝く何かが落ちている。ガバリ起き上がり駆け寄って、掘り返す。
 僕の両の手の平の上、大きなプラスチックの宝石を首にかけた、クマのぬいぐるみ。足の裏には手縫いで多分彼女の誕生日と、ママより、の刺繍。間違いない。
 これから先、この街に星の輝きを戻すには、たくさんたくさん小さな奇跡を起こさなければならないだろう。それには、あきらめない事と、物質に埋もれ忘れかけていた人の心が必要だ。
 けれども僕たちは成し遂げるだろう。
 街明かりの消えた夜空には、こんなにも星が降っている。僕たちの願いはきっと届いているだろうから。

(おわり)


著作権は作者にあります。
管理人コメント:高橋京希さんと私は旧知のネット創作仲間で、一緒にコラボ小説を書いたこともあります。宮城県在住で、今回の震災に見舞われました。無事だったので一安心ですが、街はまだ復興まで遠い状況のようです。けれど、そんな京希さんから「希望の超短編」が届き、本当に感激しています。ありがとうございます。
ここからは私の意見になりますが、普通の暮らしができる私たちは、いい加減不安に駆られるのはやめにしましょう。気持ちを切り換えましょう。今日明日のことじゃなく、もっと未来に向けた話をしましょう。強くそう願います。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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