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ある日のユダ (作:高柴三聞) <希望の超短編>

「なんで、こうなる。」
 深刻な面持ちでユダは呟いた。ユダはイエスの為ならば、喜んでその身を捧げる覚悟を常日頃、抱いていた。これは、覚悟と言うよりはロマンチックな願望であったかもしれない。ひょっとしたら日々の希望の糧だったかもしれない。当の本人においてもこれらの思いが、ないまぜになって、どちらとも言えなかったかもしれない。
 しかし、先日イエスから言い渡されたことは、かいつまんで言ってしまえばイエスを売り渡せというものであった。ユダにとって、この世の終わりが来たと言ってしまっても過言でないくらいの衝撃であった。あるいは、こんなことになるくらいなら世の中終わってしまった方がよいと思うほどのことであった。しかし、イエスによれば、これはどうしても人間が辿らなければならない道程なのだと言う。十二使徒にあって、もっとも聡明なユダもさすがに、師の言葉は理解の範疇を超えていた。悪い夢だとユダは思いたかった。
 しかし、ユダの思いとは反対に運命は確実にキリストを窮地に追い込めユダはその片棒を担がされてしまう。そして、その報酬としてわけもわからず銀貨を渡されるのである。
 ゴルゴダの丘で磔にされたイエスは、復活の奇跡を果たし、かくしてキリストの教えは決定的な瞬間を迎え、時代を超えて伝えられる教えとなった。ユダの裏切りはそのきっかけを与えたのである。
 そして、ユダはキリスト教の繁栄と共に裏切り者として永遠の命を与えられたのである。ユダは多くの人々に忌み嫌われた。ただ、ユダの福音書など少数の文献がユダの代弁をするのみである。今、キリスト教や人類の辿る将来と、そこまでの道のりをユダはどんな気持ちで見つめているのだろうか。思いをはせると、ますますユダが気の毒になってくる。

(おわり)


著作権は作者にあります。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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