ウォータースライダー (作:茶林小一) <希望の超短編>

 私の妻は照れると近くのものを動かす癖がある。
 昨日も、私が料理を褒めると、食器の入った戸棚がスライドした。こちらを向いている妻には見えなかったはずだが、私は確かに見た。
 プロポーズしたときは、大変だった。そのときは何事もなかったように思えたのだが、翌日のニュースで、私が指輪を贈った展望台そのものが、十メートルほど移動していたと知った。
 一年前に建てた新居も、すでに番地が変わっている。
 そして今、私は妻と一緒に高台にいる。どうしてこんなところに来るの、という妻の声が、波音に混ざって聞こえてくる。
 君が、世界の中心だからさ。
 私はメガホンを口に当てると、今まで考えた中で最大級の妻への賛辞を。愛を叫んだ。

(おわり)


著作権は作者にあります。
管理人コメント:えっと…これはもうクレーム覚悟の掲載です。今度はがれきを動かしてください。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。

テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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