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満開の桜の木の下で (作:橋本邦一) ♪希望のポケット童話

満開の桜の木の下で、カズくんはお父さんとお花見をしていました。
カズくんはお父さんがつくってくれたおにぎりをほおばりながら、ちょうど一年前に天国にいってしまったお母さんのことを考えていました。
『お母さんのおにぎりはなんでおいしいの?』
『カズくんのことが大好きっていう気持ちをこめてやさしくにぎるからよ』
『お父さんがたまにつくってくれるおにぎりはあんまりおいしくないけど』
『おにぎりをにぎっているお父さんのことをよく考えて食べてみて。きっとおいしいから』
カズくんはお母さんの言葉を思い出し、桜を見ているお父さんのことを見つめてみました。
お父さんは何かを思い出すような顔で桜を見ています。
よく見ると、お父さんは目にうっすらと涙をうかべています。お父さんの涙を見て、カズくんは思い出しました。カズくんが夜中、トイレにいきたくて起きた時、お父さんが台所でお母さんの写真を見て泣いていたことを。そんな夜が何度もあったこと
を。
お父さんも悲しかったんだ。そんな当たり前のことに、カズくんはあらためて気がつきました。
『お父さん』
カズくんは自分でも気がつかないうちにお父さんの名前を呼んでいました。
『なんだい』
お父さんはいつものように優しく笑って応えてくれます。
でもその笑顔の奥にはたくさんの涙があることを、今のカズくんは知っています。
『なんだい』
カズくんが黙っているので、お父さんが尋ねます。
カズくんは困ってしまい、思いついたことを言葉にしました。
『お父さんはおにぎりつくるときどんなことを考えているの?』
お父さんはちょっと困った顔をしましたがすぐに優しく微笑んで言いました。
『決まっているじゃないか。和夫が大好きだよって思いながらにぎっているんだよ。
どんな親でも子供におにぎりをにぎる時は、大好きの気持ちをこめてにぎっているんだ』
お父さんはおにぎりをにぎるしぐさをしながら言葉をつなげました。
『大好きの気持ちをこうやってつつみこんで優しく抱きしめるように祈りをこめてにぎるんだ』
『魔法みたいだ』
『おにぎりは大好きの気持ちを届けてくれる魔法なんだよ』
カズくんはお父さんのおにぎりを一口食べてみました。美味しい。さっきまで食べていたおにぎりとは全然違う食べ物みたいな味でした。カズくんはおにぎりをもう一口食べてみました。やっぱり美味しい。
カズくんはお父さんに聞きました。
『おにぎりが大好きの気持ちを届けてくれる魔法の食べ物なら、僕がつくったおにぎりでもお母さんへの気持ち、届くかなあ?』
お父さんはカズくんの目をしっかりと見て言いました。
『必ず届くさ。人が人を想う気持ちはどんな時でも一番強いものなんだ』
『お母さんはもうおにぎり食べられないけど、それでも大丈夫?』
お父さんはカズくんを抱き寄せて言いました。
『お母さんはいつも和夫のそばにいるよ。ほら、見てごらん。お母さんが大好きだっ桜だ』
カズくんとお父さんはハラハラと舞いおちる桜の花びらを見つめました。
お父さんはカズくんをぎゅっと抱きしめて言いました。
『まるでお母さんの笑顔につつまれているみたいじゃないか』
桜の花びらにつつまれながらカズくんは強く願いました。
この想い、桜の花びらにのり、届け。

(おわり)


著作権は作者にあります。

未来に夢と希望を、そして灯火を。ポケットの中の童話。
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テーマ : 児童文学・童話・絵本
ジャンル : 小説・文学

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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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