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ジャックと桃の木 (作:不狼児) ♪希望のポケット童話

 むかしむかし、あるところにジャックという気のいい若者がいました。いい年をして、いまだに定職がありません。どんな仕事についてみても満足に仕事をやりとげることができなかったのです。あるとき病気になってしまったお母さんの言いつけで、子牛を売りに市場へ向かうとちゅう、道をよこぎるカニと顔があってしまい、ついうっかりあいさつをしてまうとあんのじょう、「どこへ行くんだ」とたずねます。「市場へ子牛を売りに」とこたえてしまってから、ジャックはしまったと思いました。お母さんからくれぐれも「子牛を売ってお金にかえるまではだれとも口をきいてはいけないよ。おまえがひと言でもしゃべると、いつだって悪いことになるからね」と注意されていたのです。「おれは腹がへっているんだ」カニは言います。「どうだ。おれのもっている桃の種と、その子牛をかえてくれないか」カニは大きなはさみをふり回してジャックをおどしつけるように、ちいさなひからびた桃の種をさし出すのです。「もんくはないだろう。この種が芽をだして、木が大きくなり、枝いっぱいに桃の実がなるのを見たら、あのとき親切なカニさんにもんくを言わないでよかったとしんそこ思うだろうよ」
 ジャックが子牛と桃の種をこうかんして家に帰ってくると、お母さんはあきれてなにも言いませんでした。でかせぎに行って苦労しているお父さんのことを考えて、すこしだけ涙をうかべ、くすりは買わないともうなかったので、食事もとらずに寝てしまいました。ジャックはさすがにがっかりしましたが、しかたなく庭のすみに種を埋めて、たっぷり水をかけてやりました。あくる朝には芽を出しました。二日めにはジャックの背たけをはるかに越したりっぱな桃の木に成長し、三日めの朝、花は満開でした。お母さんをよろこばせようと花のついた枝を折って病室の花びんにさしたジャックに、「まだ安心はできないよ。だいたい実がつくかどうかもわからないじゃないか」とお母さんはそう言うのでした。日が高くなると花は散り、指のさきほどにふくらんだたくさんの実が、あおあおとしげった葉のあいだにゆれていました。けれども正午までには桃の実のほとんどすべてが落ちてしまいました。夕日をあびて、たったひとつだけ熟した桃は、子どもの頭ほどもある大きなものでした。もぎとろうと、ジャックが手をのばします。すると、どうでしょう。桃はジャックの手の中でまっ二つにわれて、なかからは種のかわりに赤んぼうがとびだしたのです。赤んぼうはてのひらに乗るくらいの小さな男の子でした。ジャックは少しかんがえて桃太郎と名づけました。
 桃太郎をうみおとしたあと桃の木はふつうの桃の木になってしまったようで、来年になってみなければ、また花が咲いて、こんどはたくさんの実がなるのかどうかはわかりません。桃太郎はひと晩でりりしい少年に成長したので、ジャックはちょうどおなじ背かっこうの五月人形の服を着せてあげました。桃太郎はよろこんで、「桃の実はどうしました」とジャックにたずねます。まだ食べないでおいてあるとこたえるといっそうよろこんで、「ここにもってきてください」桃太郎は自分が内部におさまるように、二つにわれた桃の実をあわせます。「こうすると」桃太郎の声が桃のなかからきこえます。「桃の実はぼくの船になるのです」言うがはやいか桃の実は空中にうかびあがり、部屋のなかを自由じざいに飛びまわっていたかと思うと、窓からとびだし、庭をひとまわりして、また机の上に着陸しました。翌日、桃太郎が小さなてんくうの島ラピュタに鬼たいじに行って、宝ものをいっぱいもって帰ったことは言うまでもありません。

(おわり)


著作権は作者にあります。

未来に夢と希望を、そして灯火を。ポケットの中の童話。
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テーマ : 児童文学・童話・絵本
ジャンル : 小説・文学

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Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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