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初夏 (作:三里アキラ) <希望の超短編>

 目覚まし時計が鳴って、夏の女神がだるそうに右手だけ伸ばして止める。キャミソールにハーフパンツ姿で青いブランケットをかぶった女神は、まだと二度寝でもするのかうつ伏せで動かない。
 少しの間があって、もう一つの目覚まし時計が鳴り始める。女神は小さく呻き、それも右手だけ伸ばして止める。止めてまた呻く。長く茶色い髪が腕や顔に絡まるので、それが鬱陶しいのかもしれない。女神は伸びをして、諦めて金色の瞳を開き、むくりと起き上がる。
 立ち上がると陽射し。眩しい陽射し。
 洗面台の冷たい川で顔を洗った女神は、クローゼットを開け、明るい色の中から若葉のワンピースを身に付ける。風が吹き、萌木の香りが流れる。
 輝く命の季節。夏の女神はまだ眠そうに、世界が移ろい行くのを見つめる。

(おわり)


著作権は作者にあります。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

青砥 十

Author:青砥 十
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、奈良県在住。どうぞよろしくお願いします。

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