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ベランダの向こう側 (作:三里アキラ) <希望の超短編>

 部屋の明かりを消した。最初真っ暗だったけれど、月明かりもあるし、次第に目は馴染んで見えるようになった。
 窓を開けた。夕立のおかげで少しひやりとした空気が流れ込む。ここは田舎なので車の音はそんなにしない。

 犬が吠える。わんわんわんわん吠える。
 遠くから救急車のサイレンが聞こえる。近づいてはこない。

 私はパジャマ姿でベランダに出る。
 今日、嫌なことがあった。このまま闇に溶けてしまいたいと思っていた。
 けれど、闇だけじゃなかった。空には月と星があって、外はちゃんと明るかった。
 ベランダの向こう側は絶望じゃなかった。

 犬が吠える。わんわんわんわん吠える。
 まるで私を元気付けようとでもするように。
「うるさいよっ」
 明るい声で言えたので、もうお布団に入って明日のために、寝よう。

(おわり)


著作権は作者にあります。

疲れた心に安らぎと光明を。みんなに届け、希望の超短編。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

青砥 十

Author:青砥 十
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、奈良県在住。どうぞよろしくお願いします。

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