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後輩書記とセンパイ会計、 半裸の老婆に挑む

 開架中学一年、生徒会所属、有能なる書記のふみちゃんは、時代が違えば天照大神が隠れた岩戸の前で踊ったという女神アメノウズメの友達だってなれたかも――はさすがに壮大過ぎるか。相手は日本創成期の神々だ。ふみちゃんは小学生時代、家が神社であるせいか、巫女の歴史を神代まで遡って自由研究をまとめたほどの上級者だったらしい。アメノウズメは岩戸の前で胸を全部さらけ出して襷(たすき)をかけて踊ったと伝えられ、一方、古墳から出土した埴輪の巫女も襷をかけていて、だから古代の巫女は襷をかける、と結びつけたそうだ。そんな研究内容を図書室で話半分に聞いている一年先輩の生徒会所属、平凡なる会計の僕は、およそ吊り合わないほどの神話知らずで、数学が得意な理屈屋で、今日は取材を受けるからと眼鏡を新調してきたところだった。
 取材というのは、生徒会の活動をインタビューされることになったのだ。生徒会室がかなり雑然としているので、図書館のきれいな一室を使うことになり、僕とふみちゃんは早めに着いたので何となくおしゃべりしていた。四月三十日、今日は図書館記念日らしいが、普段から図書館をそんなに利用しない僕にはあんまり関係がなかった。
「何かさ、襷って聞くと、パーティグッズの『本日の主役!』みたいなのを思い出すね」
 すると、ふみちゃんはむすっとした。ちなみにふみちゃんはつやつやの黒髪を今日は珍しく頭の上でお団子結びにしていた。取材だからいつもの髪型と変えてきたのかもしれない。意外にそういうの意識するんだな。
「数井センパイ、違います。襷は田植えとか神聖な行事にも使うくらい大事なものです」
 田植えって農作業じゃないか。巫女とは関係ないと思うけれど。それに田植えって神聖なのかな。泥だらけだけれど。まあ、とりあえず。何で襷の話になってるかと言うと、生徒会長の世界さんが数日前、取材を受けることを僕たちに伝えた時、「わかりやすいように役職を書いた襷でも用意するか」などと言い出したことの影響かもしれなかった。
 生徒会長の屋城世界さんは、親がつけた名前とは言え、世界を名乗れるほど寛大な人物である。性別は男だ。走り幅跳びで県大会まで行った陸上部の三年生エースであり、一年中日焼けしているような活力溢れる人だった。
「ふみちゃん、話す内容考えてきた?」
 正直、今日は世界さんと、あと女子副会長の英淋さんがメインで話すだろうから、僕は適当に横で相槌を打っていようと考えていた。英淋さんは他人想いの優しい性格で、話し方も丁寧だから取材受けは一番いいだろう。世界さんは大きなことを言う変な癖があるし、僕は理屈っぽくて口数が少ないし、ふみちゃんは説明が大雑把だから、活動説明は全部英淋さんに任せたほうがいいくらいだ。さて、そろそろ世界さんも図書館に――
「数井センパイ、数井センパイ、数井センパイ」
 何で三回言ったんだ。僕の名前は数井だけれど。みんなよく知ってるんじゃないのかな。そんなふみちゃんは携帯の画面に目を落としている。
「英淋さんからメールが来ました。弟さんが公園のブランコで靴を飛ばしてなくしたから今すぐ家に帰るそうです」
 何でだよ……と溜め息をついたが、英淋さんはそれが優先という家族想いな人だった。弟はたくさんいるらしいが、きっと僕たちにメールを送りながら学校を駆け出して、弟の靴探しに向かったに違いない。
「英淋は緊急事態宣言らしいな。それじゃあ、始めよう」
 世界さんが、大人の男性を連れて僕たちのいる机に向かって歩いてきた。この人が取材する人なのかなと思ったが、一番驚いたのは世界さんよりも数倍色黒な肌をしていることだった。ホームページを作っている人と聞いていたけれど、イメージと全然違った。
「今日取材してくれる田耕(たすき)さんだ」
「どうも、皆さんはじめまして」
 名刺を渡される。今回の取材は、地域の新聞や広報誌でなく、開架中学のホームページに生徒会活動を載せるにあたり、ホームページを作っている会社の人に取材してもらうというものだ。田耕さんは肩から大きな黒いバッグを提げていて、趣旨説明を終えると、バッグから小さな機械を出し、机に真ん中に置いた。この小型マイクで録音するらしい。後で写真撮影もするという。とにかく全部自分でするそうだ。
「何でもするんですね」と僕は感心する。
「そうですね。生まれがすごい田舎だし、何でも出来る万能人になれって育てられたんです」
 田耕さんは真っ黒な日焼けで年齢がわかりにくいが、声はかなり若かった。まだ二十歳くらいの気さくなお兄さんのようで親しみがわいた。取材の前に世界さんが尋ねる。
「何でそんなに日焼けしてるんですか?」
「ああ、これね。子どもの頃から素潜りを趣味でやってるんです」
「海の近くに住んでるんですか?」
「八丈島なんです。みんな知ってるかなぁ、伊豆諸島の島なんだけど」
 田耕さんは笑顔で聞いてくる。世界さんも僕も知ってると頷いたが、これまで静かだったふみちゃんが突然不思議なことを言った。
「はい、知ってます。半裸のおばあちゃんがいる島ですよね」
「えっ……と? 俺の……ばあちゃんは、大昔になくなってるけど――?」
 空気がおかしくなる。何とか答えてくれた田耕さんはいい人だった。
 僕はすぐさま世界さんに取材を始めてもらってくださいと頼み、ふみちゃんに変なことを言うなと厳しく目配せした。ふみちゃんは頭のお団子からハテナの苗が生えたような顔をしていたが、世界さんが、最近の全校ボランティア活動とか商店街マップ作りとかの説明を始めると、ふみちゃんも自分がそれに全部関わって報告書まで書いていることを忘れたかのように、興味津々に世界さんの話に聞き入っていた。
 田耕さんは、あの一瞬だけ変な戸惑いはあったものの、僕たちの説明をスムーズに聞き取ってくれて、取材を終えた最後に立派なカメラで撮影をした。ホームページに載るのは気恥ずかしいけれど、僕も世界さんの選挙ポスターみたいな堂々と朗らかなる笑顔を見習って顔を作った。ふみちゃんは背が小さくて、端に立つと差が極端だったので、何となく真ん中に入れた。アメリカ人に捕まったエイリアンっぽい写真になってなければいいけれど、田耕さんは快心の笑みでシャッターを切り、「オッケー!」と言ってくれた。
 撮影が終わるともう六時だった。外は暗い。田耕さんは挨拶をしてバッグを担ぐと足早に図書室を出て行った。僕たちも帰り支度をした。と、世界さんが腕を組みながら考えている。
「もっとスケールを感じることを言えば良かったかな。世界と競える中学校をめざすとか。民主主義をここから始めるとか。夏くらいに巨大コロッケ作りでギネス登録をめざしているとか」
 生徒会の活動報告なんだから大きなことを言っても意味はない。巨大コロッケなんて僕たちも初耳だ。まさか本気でやるつもりじゃないよな。
「いや……たぶん、そんなの使わないですよ」
「それもそうか」
 世界さんは納得した。
「あっ、数井センパイ。これって、さっきの人の忘れ物ですか?」
 ふみちゃんが持っていたのは書類が何枚か入ったクリアファイルだった。会社名がプリントしてあり、田耕さんの名刺と同じだった。イスに置きっぱなしだったようだ。
「そうだね。早く届けてあげようか」
 住所を見ると学校から割と近くだ。世界さんは帰宅方向が違うので、僕が会社に寄って返す役割を任された。正門を出ると、なぜかふみちゃんもついてくる。
「えっ、ふみちゃんも来るの?」
「数井センパイ、違います。わたしも結構回り道すれば、同じ方向なんです」
「それ、同じ方向って言わないよ」
 どういう気持ちか知らないが、単に興味本位なのかもしれないけれど、ふみちゃんと一緒に薄暗くなってきた道を歩いて田耕さんの会社に向かった。

 会社はマンションの一室だった。インターフォンを押すと、田耕さんが応答してくれてほっとした。忘れ物のことを言うと『うわぁ、すごい助かる!』と感謝された。僕は渡すだけで帰るつもりだったが、田耕さんが玄関まで出て来てくれたとき、ふみちゃんの姿を見てちょっと表情が変わった。少し――真剣味が増したというか。声が低くなったというか。
「君たち、ちょっとだけ話したいことがあるんだけど、今から大丈夫? 事務所に寄ってくれない?」
 すぐ帰って欲しくないという勢いで、お菓子があるからとか、今日撮った写真でも見る? とか強く誘われて、僕は正直戸惑った。時間が遅いのもあるけれど、ふみちゃんはどうなのだろうか。
「あの、半裸のおばあちゃんの話ですか?」
「んーと……まあ、それもあるね」
「聞きたいです。センパイはどうします?」
 また取材前にふみちゃんがつぶやいた意味のわからない例の話が出た。ただ、もうそういう流れになったら、ふみちゃん一人にするわけにはいかない。僕も事務所へ入ることにした。田耕さんの事務所は三階だった。
 部屋はきれいに整理されていて、書類や文具や謎の袋とかで雑然とした生徒会室に比べると圧倒的にきれいだ。事務所には田耕さんしかいなかった。
「一人で働いてるんですか?」
「いや、同居人がいてね。もう一人は別の会社で働いてるんだけど、ルームシェアをしてるんだ。って言っても、中学生だとわからないかなぁ」
 このマンションの部屋を共同で借りているそうだ。大人だとそういう生活をしている人もいるんだなぁ、と聞きながらテーブルに着く。お菓子とジュースがすぐ出てきた。それからパソコンと、何だかほこりっぽい古いアルバムも一緒に現れた。
 まずは今日撮った写真の確認が始まる。デジタルカメラに線をつなぐと、写真がパソコン画面に映し出された。田耕さんが操作する間、僕たちは夕飯に影響がない程度にお菓子を一つ二つ食べる。田耕さんに「写真映りどう?」と聞かれたけれど、自分たちの映っている写真を良いと言うのは照れ臭くて、適当に頷いた。ただ、世界さんはどの写真でも堂々と最高のスマイルを作っている感じだった。やはり大物は写真映りも別格だ。
「じゃあ、これは何枚か選んでページに掲載するね。で、問題はこっちなんだけど」
 田耕さんは古いアルバムを開いて僕たちに見せた。ふみちゃんは待ち望んでたとばかりに身を乗り出して覗き込む。小学生くらいの子どもが何人か映っていた。背景は森の中が多い。ページをめくると、海辺で遊ぶ写真や民宿みたいな古い家の前に並んでいる写真もあった。これは島だろうか。何となく八丈島のような気がした。
 もそもそっ、しゅるしゅるるっ、と変な音がした。ふみちゃんのカバンの中からだ。おそらく愛用の花柄のしおりが何かを訴えようと暴れているのだと思うが、今日はきちんとフタが締まっているようで、飛び出てこない。田耕さんがいる時に出て来ても困るし、むしろ気のせいと耳を押さえたい状況だ。室内にラジオが流れているので、向こう側の田耕さんに不穏な紙の舞う音は聞こえてないと思いたい。
「あ、この日ですね」
 何枚かめくった後、ふみちゃんは突然言った。
「えっ――」と田耕さんは息を飲む。
「……この写真に、おばあちゃん、やっぱりいますね」
 ふみちゃんが一枚を指差した。田耕さんはどれがどうとか何も言わなかったのに。森の中の景色だ。みんな長袖と半ズボン。木が重なり光が乏しくて奥深いが、写真の中におばあさんの姿などどこにも映ってない。写真には日付が入っている。四月三十日。西暦の年もあったが、何年前か計算する前に田耕さんが手に取ってしまった。
「やっぱりそうか。……この夜、友達が行方不明になったんだ」
 さっと背筋に冷たいものが走った。お菓子をもう一個だけ食べようとした手を止める。もうそんな気分ではない。
「おっぱいを肩に襷がけにしてますから、人さらいのおばあちゃんです」
 いきなりふみちゃんの口からおっぱいという単語が出たことに驚いたが、そんなことよりも『人さらい』という言葉の強烈さによって僕の言葉は封じられた。田耕さんもまた深く沈んだ顔つきで、四月三十日の写真をじっと凝視していた。
 行方不明とか事件みたいな言葉が飛び交い、僕は何とかふみちゃんが深入りする前に追いつきたかった。文系の女の子に見えて理系の僕に見えない何かがあるのだろうか。あるとすれば探るしかない。
「そのおばあさんは……何者なんだ?」
 そこから溢れ出す状況説明は雑だった。八丈島に現れる半裸の老婆で、上半身は何も服を着てなくて、長く垂れさがったおっぱいを襷みたいに肩に掛けて、森で迷った子どもを助けてあげたり、逆にさらったりするらしい。何だその助けてあげたり、逆にさらったりって。どういう違いなんだろうか。子どもの日頃の行いで――とかそういうよくある教訓なんだろうか。
 本当に八丈島に伝わる恐い話なのかもしれないけれど、ふみちゃんが長いおっぱいなどと言うせいで、緊迫感が薄かった。写真がただのハイキングみたいなせいもある。ただ、田耕さんはふみちゃんが僕に説明するのをじっと向かいで強張った顔つきで聞いていた。そっちの雰囲気のほうが変に不気味だった。そして、重たい口を開く。
「そのばあさんは……何で人さらいするんだろうか?」
 誰への質問なんだろう。ふみちゃんに答えを求めているのかな。
「この日は、ヴァルプルギスの夜でもあります」
 ふみちゃんはまた突然耳慣れない言葉を言った。田耕さんも眉をひそめるが、ふみちゃんは構わず続けた。
「本当は春を告げる日なんですけど、魔女が跋扈する日でもあるんです。日本だと山姥(やまうば)って言いますけど、山に捨てられたおばあちゃんとか、八丈島だと江戸から流れ着いた流刑者の家族とかもいて……やっぱり人とのつながりに未練があるみたいです」
 僕の頭はすでに理解する許容量を超えていた。春を告げる日。魔女が。山姥が。捨てられた。江戸から流された。人とのつながりに――未練が。
「ああ、八丈島は、昔は流刑の地だもんな。怨念も溜まるわけか」
 田耕さんだけは何か事情を飲み込んだようだった。島に生まれ育ったから知っていることがあるのかもしれない。
「人とのつながりに未練か……。俺の親とかの代だと、島を離れるか残るかみたいな家族内の言い争いもあって、八丈島へ一斉移住するときも問題が起きたらしいしな」
 何だかもう完全にふみちゃんと田耕さん二人だけの会話になっていた。僕が何か口を挟み込むがない。
「魔女は……人の心がつながらない狭間に現れます」
 ハザマという難しい言葉だった。田耕さんは噛みしめるように深々と頷く。
「俺も島を出てから島のことをよく調べたんだ。どうも、島の祖先は、大津波で一人だけ助かった妊婦だっていう伝説もあるしね」
 田耕さんの話だと、八丈島には外から流れ着いた人が定住したことで歴史が始まり、残る人と離れる人とでいろいろあったようだ。で、そんな歴史があって、上半身裸のおばあさんは結局、何者なんだろうか。いるかいないかで言うと、写真には映っていないのは事実だけど、ふみちゃんはどこかにいるような口振りだ。それより行方不明になった友達というのはもういいのだろうか。人とのつながりよりも、話がつながっていないことのほうが僕は不安だった。
「数井センパイ、違います」
 まったく不意を突かれた。
「行方不明になったのは、その子がさっきのおばあさんについて行ったからです」
 いや……それで片付く話なんだろうか。僕は田耕さんに助けを求める。
「でも、警察は探したんですよね?」
「警察だけじゃなく、みんなで探したけどね、見つからなかった。山で遭難したということになってしまった」
「あの襷おっぱいのおばあちゃんに手をつながれたのかも……ですね」
 ふみちゃんは瞳を伏せながらつぶやいた。アメノウズメが踊ったと記された古事記では、手を次ぐと書いて襷と読むらしい。毎年正月にテレビで見る新春を告げる駅伝でも、選手をつなぐものや世代をつなぐものは襷であり、田を鋤で耕すのも春を告げます――と、ふみちゃんは静かに結んだ。
 最終的に僕の頭の中に描かれたイメージは、上半身裸の奇妙なおばあさんが道に迷った子どもの手を引き一緒に田を耕している様子で、たぶんそれは大いに間違っているのだと思うけれど、不思議とそんなことが古い書物に書かれていてもおかしくないような感覚だけが残った。こんなことを話せば、きっと博学の後輩からはまた「違います」とすぐ言い返されそうだけど。
 時代も場所も超えたいろんな話が集まり、つながったり交差したり結びついたりしたものとして、僕はなぜかふみちゃんが大雑把に説明したものがあまり恐い存在に感じなかった。『春を告げる』という明るい言葉があったからかもしれない。
 迷った人をたすけたり、手をつないだり、隠してしまったり――
 そのとき、田耕さんの携帯が鳴って受信を知らせた。同居人がもうすぐ帰るという連絡メールだった。今日は田耕さんが夕食の支度をする番らしい。
「うわぁ、ごめんな。もう解散しよう。中学生をこんな時間まで引き止めるもんじゃないな」
 僕たちはカバンを持ち、田耕さんにお菓子とジュースの御礼をした。いつの間にかふみちゃんのカバンの中のしおりも静かになっていた。見なかったわけだし、それでいい。
 田耕さんは玄関まで送ってくれた。僕たちがおじぎすると、島生まれを感じるにこやかな笑顔を見せてくれた。
「夜道に迷わないようにね」
 さっきの話の後だと少し身の締まる送り言葉をもらって、僕たちは家路を急いだ。

 急ぐと言ってもふみちゃんの歩幅は小さいので、なるべく街灯が明るい道を選びながら僕たちは普通に歩いた。結局、僕たちは田耕さんの事務所へ何をしに行ったのか、よくわからなかった。三十分間、脈絡もなくしゃべっただけな気がする。まあ、忘れ物のファイルをきちんと手渡したことは間違いないけれど、そのために来たんだよなぁ、と苦笑してしまうくらい、関係ないことが盛りだくさんの夜だった。
「数井センパイ、春を告げるヴァルプルギスの夜はこれからです」
「んっ?」
「家に帰るまでが下校です」
 まあ、家に帰るまでが、そうだけど。何とかの夜は結局何なのかよくわからないままだ。
「どうした?」
 すると、お団子頭のふみちゃんが上目遣いにぐっと身を寄せてきた。
「魔女は――人の心がつながらない狭間に現れます」
 少し心細げに夜道に甘える感じだった。
「……数井センパイ、手を出してください」
 僕は素直に手を出した。すると、ふみちゃんがきゅっと手をつないでくる。手のひらの感触はやわらかくてふんわりと温かかった。
「やっぱり、手をつなぐと、ついて行きたくなりますよね」
 ふみちゃんはふんふんと鼻歌を浮かべて歩く。そのまま自分の家まで手を離すつもりはないようだった。
 明日から五月になってゴールデンウィークの三連休も近いけれど、ふみちゃんとは別に進展はない。少し恥ずかしい気持ちがありつつ、並べば不思議と心が落ち着くのを感じながら、ふみちゃんと帰るだけだ。

(了)


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青砥 十

Author:青砥 十
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、奈良県在住。どうぞよろしくお願いします。

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