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「侍と、子豚、狼、恋女房」

 侍というものは年の瀬になると肩身が狭い。仇討ちや夜討ちがあるなら年内に済ませればいいというのが人情だと思うのだが、どうも役人も庶民も入用が多いと見えて、仕事が激減してしまうのだ。今日も職業安定処をいくつか回ってみたが、やはり空振りだった。食糧の蓄えもそろそろ危うい。正月のために見栄をはって夫婦の着物を新調したのが財布に響いた。
 背を丸め繁華街を歩いていると、絵本から出てきたような三匹の子豚が声をかけてきた。何か切羽詰まった様子だが、身なりもきちんとしているので話を聞いてみる。案の定、狼が彼らの家を襲ってくるらしく、始末して欲しいというのだ。
 侍は早速彼らの家に向かった。すると、藁の家も木の家もレンガの家も――つまり子豚たちの家をすべて破壊し終わった強靭な狼が、牙を研いで待ち構えているではないか。だが、侍は受けた仕事に手は抜かない。いきなり先手必勝とばかり斬りかかると、狼はパッと翻り、うっかり足を滑らせ、そばにあった湖に落っこちた。
 慌てて詰め寄ると、寒そうな薄着をした湖の女神が現れ、お前が落としたのは金の狼、銀の狼、鉄の狼どれかと聞いてくる。どれも違うときっぱり答えると、女神は侍の正直さを褒め称え、普通の濡れた狼を含めて四匹もの狼を侍に託して消えた。狼たちは、もう狩猟はしません、これからは丁稚奉公から出直します、と勝手に誓い、恩人である侍にしおらしく付き従ってきた。……歩けばずっとついてくる。家を失った三匹の子豚までなぜか一緒についてくる。全員に向かって解散だ帰れと言っても、急に人語を理解しない顔をしてまったく帰らない。
 この年の瀬に、予定外に食いぶちを増やしてしまった侍は、寒空を見上げ、恋しい女房を浮かべて頭を下げる。すまん!



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安心

 まだこういう作品が書けるのだと安心しました。昨年の『黒い羊』もなかなかに趣深かったです。

バカは捨てない

>茶林さん
感想ありがとうございます。ええ、まだまだやれる気がしますよ。今年はご期待ください!
黒い羊みたいなのも書きたくなるんですよね。また心臓でも再会しましょう♪

>web拍手へのお礼
楽しんでもらえたようで嬉しいです。テンポだけで読ませてるようなもんです(笑)

♪コメント欄の存在に~♪気がつかなかぁった~♪

遅れ馳せながら,本年も宜しくお願い申し上げます。

「急に人語を理解しない」畜生振りに,吹き出しました。

動物ネタは落差が楽しい

>侘助さん
コメントありがとうございます!そっか、コメント欄確かに目立ちにくいですよね。テンプレなので、あれですが(汗)
そこで吹き出してもらえたら作者としては本望です。このコメントだけでご飯三杯食べれます♪
今年もよろしくお願いします。
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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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