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2010年賀小説「三種の神器」

 最近の若い人は「三種の神器」というのを知っているだろうか。もともとは天皇の子孫発祥のとき、天照大神から授けられた鏡・剣・玉を指す。詳細はウィキペディアなどで調べたほうが手っ取り早いだろう。そして、戦後の経済復興期には、豊かな新生活の憧れの象徴として、「三種の神器」というものが流行した。通称3C、すなわちカラーテレビ、クーラー、自動車(カー)の頭文字を取ったものである。コン○ームは入らない。産めや産めやの世情だったのだから当然である。
 しかし、21世紀になり、このように物が溢れ、価値観が多様化し、SNSで自分のフェチをさらけ出し合うことが一般化している成熟――いや爛熟した現代社会において、そうした物質的なステータスを誇ることがあまり流行しなくなっているのは確かだ。では、「三種の神器」は消滅したのだろうか。答えは、否である。
 年ごろの男性、女性でなくとも、近年「婚活」という言葉を嫌でも聞くようになったと思う。誰の頑張りかわからないが(中年男性のセクハラの成果ではないのは断言しよう)、女性の社会進出が進み、「草食男子」「肉食女子」という言葉が広く世間から注目された。女性はより従順で“おいしい”パートナーを探しているのである。実はこの「婚活」という世界で、あらためて「3C」なるキャッチフレーズが熱い注目を集めているのだ。
 まず、Comfortable(快適)であること。生活水準を保つ、十分な収入があること。次に、Communicative(理解し合える)であること。つまり、ライフスタイルが一緒であることだ。最後に、Cooperative(協力的)であること。これは、家事や育児に進んで協力してくれることを指す。朝ゴミを捨ててくるくらいでは今の女性は満足してくれない。
 こう考えると、「肉食女性」がパートナーに求める「三種の神器」とは、もはや物質的なものでなく、男性の器量ということになっているのがお分かりだろう。ただ、これは決して今に始まったことではない。1978年(奇しくも作者の生まれた年とほぼ同時期だが)から連載が開始された、ある社会的人気になったマンガにおいて、すでにこのメッセージは世の少年たちに突きつけられていたのである。トラ年を迎えるいま、もう一度思い出してみてほしい。あの“とらぱんつ”の女の子が毎回ヒステリックに叫んでいた言葉が、耳の奥に焼きついているではないか。
「ダーリン! もうっ! うちの言うこと聞く約束だっちゃ!」

(了)

 
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
さて、実は大晦日の年越しチャットで、「年賀小説とか書かないの?」と振られて、Mな……じゃなかった紳士的な私は、「じゃあ、タイトルと必須ワード1つを縛りで書きましょう」と答えて、チャット参加者からお題をいただきました。もちろん、年賀小説なので、トラは入るのですが、それ以外ということでこんな感じになりました。

タイトル:「三種の神器」(出題者:三里さん)
必須ワード:「だっちゃ」(出題者:茶林さん12歳)
※必須ワードには「とらぱんつ」(出題者:篁さん)もあったので、それも入れてました。

面白かったら、コメントなりWeb拍手なりいただければ嬉しいです。

せっかくなので、茶林さんの年賀小説三里さんの年賀小説にもトラックバックしておきますね。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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青砥 十

Author:青砥 十
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、奈良県在住。どうぞよろしくお願いします。

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