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「外れた町」

 海風の急ぐ午後、浜辺一面にハマナスの葉が広がっている。もうこの先には線路がない。ひと気のない石積みのホームで流木に座っていると、腰の低い駅鳥がそう説明にきてくれた。
 車両が走ってきた太い竜骨の線路はここで空へせりあがり、ねじ切れたようにブツンと終わっていた。あとは見渡すかぎりの海。
「お一人ですか?」
 駅鳥は穏やかに尋ねたが、答える気力はなかった。私は生まれ育った町に二度と帰れなくなっていた。町は、海の底でもなく彼方でもない場所へ運ばれてしまったのだ。駅の行き先表示は白く塗りつぶされている。
 電車は折り返してしまい、ひと月はこの駅に来ないようだ。話せる生きものは駅鳥しかいない。
「町はどうなりました?」
「……すいません、実は、去年に生まれたばかりでねぇ。五人兄弟なんですが、長男は大工に、次男は配達夫に、で、三男の私は駅員になり、四男、五男はまだ学校に──」
 適当なところで話を切る。
「あの、町は?」
「……ですから、すいません、実は、去年に生まれたばかりでねぇ。五人兄弟なんですが、長男は──」
 浜辺を見るとテントがあり、初老の女性が手を振っていた。
「あれが長男の嫁です」

(おわり)

 
「500文字の心臓」タイトル競作の投稿作品。
○3、△1、×3。何だか珍しく×が多く入った。
情景が面白いけれど、タイトルから離れてるという評価が多かったです。あれ、おかしいな?(笑)
あと、三里さん、初正選王おめでとうございます。

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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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てへ。

>あと、三里さん、初正選王おめでとうございます。
ありがとうございます。
たぶんdogさんのおかげです。犬祭とか。

>タイトルから離れてるという評価が多かったです。
タイトルとはちょっと違うかな、とは私も。
「外れた」と言うからには何から外れたのかと考えたりしてみたんですが、
何と言うか、このお話の世界は独立した一つみたいに思えたのですよ。
あくまで、私の視点ですが。

絵が浮かぶ、dogさんらしいお話だったと思います。
モノトーンの絵。
とか、こういう視点は誰が喜ぶのか。うん、ごめん。

Re: てへ。

>三里さん
どもども。この作品、ちょっとなつかしいですかね。

> >タイトルから離れてるという評価が多かったです。
> タイトルとはちょっと違うかな、とは私も。
> 「外れた」と言うからには何から外れたのかと考えたりしてみたんですが、
> 何と言うか、このお話の世界は独立した一つみたいに思えたのですよ。
> あくまで、私の視点ですが。

確かにねー。実は外れた町そのものは何も描いちゃいないのです。
線路の先にあったはずの存在、ということで。消えた町とか別表現にも言い換えられてしまうのも弱かったんでしょうね。

> 絵が浮かぶ、dogさんらしいお話だったと思います。
> モノトーンの絵。

えっ、モノトーンなのか。浜辺に青い葉を敷いても、機関車の黒や竜骨の白が印象に残るんだろうなぁ。浜辺のテントを黄色くすれば良かったなぁ(笑)
感想ありがとうございました!
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sleepdog

Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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