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「あやしい太鼓売り」

 散歩のおりに神社のそばを通ると、道端に太鼓を売っている男がいた。物置から這い出てきたような風体だ。息子たちが恐る恐る近づくと、いま生き返ったかのように身を起こし、黄色い歯を見せ笑い、威勢よく売り物の太鼓を鳴らしはじめた。カラスの郎党どもが騒がしく枝から枝へ渡りあう。男は腰の巾着袋からよく磨かれた小石を取り出し、息子たちの前に並べた。男が太鼓を鳴らすと、石はころりころりと踊りだし、やがて鼻の高さまで浮かび上がった。息子たちはひゃあと声を上げ、おおはしゃぎで私を呼びつけた。なにを、そんなことあるもんか、と覗きこめば、男は下賎なしたり顔で太鼓を鳴らし、私の鼻の高さまで浮き上げた。種を暴いてやろうと大人げなく石に掴みかかれば、咄嗟に男は真っ赤な顔でめいっぱい太鼓を打ち鳴らし、石はさらに宙へと逃げていく。息子たちもカラスどもも無量にそれを囃し立て、石はするする、太鼓はどろろ。逃すまいと見上げると、私たちの真後ろに天を衝くような大男が立っていた。目も鼻も肉に埋もれ、大きな口から小人の手足がだらりと垂れる。道端を向けば、太鼓の音も男もすべて失せ、息子たちの姿も煙のように消えていた。

(了)
「500文字の心臓」にて、ホラー作家森山東氏を選者に迎えてのホラー超短編企画に投稿した作品です。結果は○1、△3ということでいまいちパッとしませんでしたが、選外評はわりともらいつつ、どうもホラーとはちょっと違うというコメントが多かったです。ふーむ……。
ちなみに原題は「あやしい太鼓売り」でした。snowgameさんに捧ぐ作品です。もうその由来はとっくの昔のことですが、覚えていてくれたら嬉しいかも。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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ホラーって難しいですね。

 こんにちは、ご無沙汰しております。
 ホラー超短編ではお褒めいただき、ありがとうございました。dogさんに褒められた~と小躍りしてました。オチが読めたと言う指摘に対しては「精進します(汗)」とお返しいたします。
 dogさんの作品はホラーというより都市伝説の香りがしました。あまり怖くなかったな、というのが正直な感想です。失礼。
 ところで、広島には来ないんですね。ちぇっつまんないの。広島まで来ていただけたら福岡まで新幹線1本なのに。というわけで、私もだまされてましたよ。
 長々とお邪魔しました。

>三里アキラさん
いえ、こちらこそお世話になってます。
そうですね、やっぱりオチが定番で読めちゃうと残念なときもあります。
そうか、都市伝説ですかー。最近近所の中華料理屋で「ぬ~べ~」のコミックスを読んだせいかなぁ(爆)。実際怖がらせるのって難しいですよね。血とか刃物を使わないで怖さを(森山東さんの「お見世出し」がそうなので)、という自分縛りをかけていたので、そこらへんは私ももっと勉強が必要だと感じました。
>広島
すいません、あまりにも微妙すぎる嘘なのでした(爆)。大阪までならともかく、広島や福岡はなかなか仕事でも行く機会がなくて……。特に博多は未踏の地なので、いつか遊びに行ってみたいんですけれどね~。
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Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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