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再生の森 (作:高柴三聞) <希望の超短編>

 男は、長いこと彷徨い歩いてきた。果てしのない砂漠の中を。
 長いこと、長いこと歩き続けてきて、どれくらい歩いたか分らない。
 十年も百年も、男にとっては変わらない。ひたすら、男は歩いていた。
 男の顔に刻まれた深い皺の数は、そのまま男の苦しみの深さを伺い知るには十分なものだった。
老いた肌は、カラカラに干からびて乾いた薪のようであったけれど、その足取りは未だ力強さを失っていなかった。しかし男は家族も故郷も失て一人ぼっちであった。
 突然男は、情け容赦なく照りつける日の光を睨みつけ、呟いた。しかし、男の喉はカサカサに乾いていて、とても言葉にはならなかった。
 男は、大地にがっくりと膝を落とした。そして、大地の砂を両手に一つかみ掴むと大きな声で泣き叫んだ。
「何故、天は私を一人ぼっちでこんなに長く生かしているのですか。」
 二度目に呟いた言葉は確かにそう聞こえた。
 大粒の涙が掌の砂の上に零れた。すると、涙の零れたところから一つの芽が生えてきた。
 それは、みるみるまに伸びて男を覆い、やがて男は一本の木に姿を変えた。
 それから、長いことその木は一本砂漠の中で佇んでいたが徐々に木の周りから小さな草花が育ち、虫たちが遊び、木々が生え育ち、獣や鳥が営みを始めるようになり、男の木の周りは緑豊かな森になった。
 その後、森は多くの命を育み、森の中心には男の木が多くの命を見守り続けた。
 今では、誰もが知る緑豊かな森だけれど男の名を知る人は誰もいない。ただ、多くの命を見守る優しげな老木は何も語らず、満ち足りたように佇むだけであった。

(おわり)


作者コメント:何かのお役にたてれば幸いです。
著作権は作者にあります。
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テーマ : 超短編小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:sleepdog
幻想、冒険、恋愛、青春などをテーマにした短編小説をいろいろ書いています。子供のころから妖怪が大好きで、最近は結構ゆるふわなものが好みです。 生まれは群馬県前橋市。現在、名古屋市在住。どうぞよろしくお願いします。

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