
この街もまたなす術もなく暑くなり、一週間も続けてスコールが降るようになった。ずっと冷房をつけっぱなしなので電気は自然と不足し、最近のビルは今更エコマーク入りのソーラーパネルを大きく広げ、陽射しも雨もさえぎっている。でも、それで地面に恵みが届かないわけでなく、パネルのあい間から滝のように結局流れ落ちてくるのだ。光が水に乱反射し、街の景色も瞬くごとに移り変わる。
「うひゃあ、たまんないね!」
参ってるのか悦んでるのか、おこぼれを浴びたヤシの木は声をあげて騒いだ。大柄な肩をふるわせ、頭のなかを洗うように伸びをする。リサが上目づかいに押し黙っていると、ヤシの木は「もうそんなこわい顔すんなよ」と腕をとり、湿ったからだに引き寄せた。
やっぱり会うんじゃなかった。リサは前髪で瞳を隠し、甘える心を一言ずつ噛みつぶす。でも、枝葉のあい間から棒のように流れ落ちてくるのだ。
髪もシャツもビリジアンのスカートも濡れてしまう。今日のために買ったのに。鼻をすするリサの足元に小さなヨシガモがひと休みに寄ってきた。スリットのあい間からも糸のようにみんな流れ落ちていく。そして羽のあい間からも、道に芽ぶく双葉へ向かって。
(了)

砂ずきんは絶壁をゆっくりと垂直に登っていく。島に続々と舟が着き、いっそう数が増えていく。長い氷河期がもうすぐ歴史から追放される。海岸から舐めあがる吹雪もやわらいできた。
凝固した植物の体は国境兵のように整列し、砂ずきんはそれを造作もなく越えていく。島の頂きをめざすと、うずたかく半月状に盛られた泥のなかに、地盤を揺るがすほどの巨大な蝸牛が眠りについていた。周囲の地面には網目のように静脈が張り巡らされ、海をわたり野を走り、この星のあらゆる叫びを吸い寄せていた。
先陣は歓喜の目でふり返り、後続の輩に空いているバルブの場所を教えた。歓声はやまない。ついに頭数が揃ったのだ。かれらは呼吸を合わせ、すべてのバルブを一斉に回す。やすらかな蝸牛のなかに熱狂が流れこみ、赤々とふくれあがって地鳴りが島を覆いつくした。
やがて用済みの古代史が焼かれ、舞いおこる陽炎をつき抜け烈烈烈烈と噴き出す大地の咆哮がぶあつい雲を撃ち破る。雲はうねり耳たぶとなり、島はそのゆるんだ穴の一点をひたすら撃ち続ける。天の耳が鳴きくずれ臨界を超えた時、一瞬ですべての鼓膜が犠牲になった。そして、地表には新緑のにおいがただ広がっていく。
(了)
掲示板のログが吹っ飛ぶ――これが投稿サイトにとって一番きつい事態だ、というのは私も去年の『犬祭』でほんと身に沁みたことです。
で、どうしたらとりあえずしのげるのか、それは去年、私がピンチになった時に青島さかなさんが教えてくださいました。今でもすごく感謝しています。なんというか、管理人同士は妙な連帯感があるなのかもしれません。
というわけで、「500文字の心臓」の選評掲示板が一日も早く復活するといいな、と願いながら、今夜『緑の傘』を投稿しました。
サッカー、面白いですね。もう毎晩遅くまで見てますよ。
やっぱりハイライトでは物足りず、試合の流れを見ないと思い入れが出来上がらないもんだな、と思うのです。
例えば、さっきまでイングランド×トリニダード・トバコ戦をずっと見ていたのですが、イングランドの一方的な攻めを、後半の残り10分までずっと0点で死守しつづけていたトリニダード・トバコ。しかし、最後の最後にベッカムをフリーにしてしまって、ため息が出るくらい絶妙なクロスを入れられ、先制点が入りました。そして、数分後にもう一点ミドルシュートで。
トリニダード・トバコは今回は初めて出場した国です。もうそれだけでも国中大騒ぎだと思いますが、前の試合、優勝候補の一角スウェーデンと戦い、レッドカードで選手を一名欠きながらも、ゴールを全員が死守し、双方無得点で引き分け、勝ち点1を手に入れたのです。
で、今日のイングランド戦でも、相手も攻め疲れるだろうというくらい、集中力を切らさず守りつづけていました。しかし、あの一本からあの一発。
入った瞬間、「ああ……」となぜか、トリニダード・トバコに同情する思いに駆られました。勝負事だから結果はやむ得ないけど。
たぶん、この感情はハイライトでは伝わってこないんだろうなぁ、と思います。だって、トリニダード・トバコの守備はかなり集中力が高くて、ほんとにあのイングランドにギリギリまで破らせなかったんだから。
しかし、最後はやっぱりベッカムの冷静で丁寧な仕事が試合を決めた。どんなに攻めあぐねてても彼にボールが入れば、見ているほうはワクワクするのは、やはり彼が「解決策」を作り出せる逸材だからだろうと強く感じた。
サッカー、面白いなぁ。
で、どうしたらとりあえずしのげるのか、それは去年、私がピンチになった時に青島さかなさんが教えてくださいました。今でもすごく感謝しています。なんというか、管理人同士は妙な連帯感があるなのかもしれません。
というわけで、「500文字の心臓」の選評掲示板が一日も早く復活するといいな、と願いながら、今夜『緑の傘』を投稿しました。
サッカー、面白いですね。もう毎晩遅くまで見てますよ。
やっぱりハイライトでは物足りず、試合の流れを見ないと思い入れが出来上がらないもんだな、と思うのです。
例えば、さっきまでイングランド×トリニダード・トバコ戦をずっと見ていたのですが、イングランドの一方的な攻めを、後半の残り10分までずっと0点で死守しつづけていたトリニダード・トバコ。しかし、最後の最後にベッカムをフリーにしてしまって、ため息が出るくらい絶妙なクロスを入れられ、先制点が入りました。そして、数分後にもう一点ミドルシュートで。
トリニダード・トバコは今回は初めて出場した国です。もうそれだけでも国中大騒ぎだと思いますが、前の試合、優勝候補の一角スウェーデンと戦い、レッドカードで選手を一名欠きながらも、ゴールを全員が死守し、双方無得点で引き分け、勝ち点1を手に入れたのです。
で、今日のイングランド戦でも、相手も攻め疲れるだろうというくらい、集中力を切らさず守りつづけていました。しかし、あの一本からあの一発。
入った瞬間、「ああ……」となぜか、トリニダード・トバコに同情する思いに駆られました。勝負事だから結果はやむ得ないけど。
たぶん、この感情はハイライトでは伝わってこないんだろうなぁ、と思います。だって、トリニダード・トバコの守備はかなり集中力が高くて、ほんとにあのイングランドにギリギリまで破らせなかったんだから。
しかし、最後はやっぱりベッカムの冷静で丁寧な仕事が試合を決めた。どんなに攻めあぐねてても彼にボールが入れば、見ているほうはワクワクするのは、やはり彼が「解決策」を作り出せる逸材だからだろうと強く感じた。
サッカー、面白いなぁ。
おなじみ超短編サイト『500文字の心臓』で、年に一度のトーナメント戦、MSGP2006が始まりました!(←もうとっくに始まってます)
緊張の第一回戦、私は「音撃の島」という松本楽志さんのタイトルを選びました。現在、選評実施中です。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
→こちら
それから今日、飛行機の移動中に次回タイトル競作の投稿作品の下書きを考えていました。タイトルは「緑の傘」です。うん、緑の部分にだけ反応しないように。あ、傘もか(爆)。そういうわけで、だいたい下書きも出来上がったので、あとはしっかり推敲するだけです。
『犬祭3』投稿用の小説も書いています。短編小説は本当に久しぶりだったり。没にならないことを祈っています。あなたも祈っていててください。
緊張の第一回戦、私は「音撃の島」という松本楽志さんのタイトルを選びました。現在、選評実施中です。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
→こちら
それから今日、飛行機の移動中に次回タイトル競作の投稿作品の下書きを考えていました。タイトルは「緑の傘」です。うん、
『犬祭3』投稿用の小説も書いています。短編小説は本当に久しぶりだったり。没にならないことを祈っています。あなたも祈っていててください。

百人でおにぎりをつくっていると、日本一高いところから彼女がまた声をかけてきた。退屈だからそろそろ噴火しようかとぼやくのだ。
「これから百人でピクニックというのにそれは困る」
と返すと、彼女はますます不機嫌になり、熱いものをぺっと吐いてよこした。大きなビルがみるみる溶けた。まわりは動揺し、あれをなだめるのは幹事のつとめだ、とぼくを責め立てる。その間にも白米はどんどん炊きあがる。めしを握る手にも力がはいり、やがてあたり一帯は、ほかほかのおにぎりで埋めつくされた。
彼女はものうげな流し目で問いかける。
「いま噴火したら焼きおにぎりになるかしら?」
「そうだね、一瞬ね」
「――ダイアモンドにならないかしら?」
「それはきみの加減次第だよ。だけど、チャンスは一度きりだ」
「そっか、不器用なのに」
ややあって、彼女は噴火を断念し、また千年の美しい歌をうたった。それを聞きながら着々とピクニックの準備をする。千年後の幹事よ、もうおにぎりは使えないぞ、心したまえ。
(了)


